介護老人保健施設は、老健と呼ばれる介護保険制度の入所サービスの一つです。平成12年に介護保険制度が始まりましたが、その特徴や役割は高齢者や家族、介護関係者でも知らない人が多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、介護老人保健施設の特徴やサービス内容が理解でき、専門職にとって働く場所としても魅力的なことがお分かりいただけます。

介護老人保健施設とは
介護老人保健施設の特徴をひとことで表すと、「介護保険を使ってリハビリや医療ケアを受けられる入所施設」といえます。介護保険制度では、入所して介護サービスを受けられる施設はいくつかあります。その中で、介護老人保健施設は自宅での生活を目指して、一定期間入所しながら介護サービスやリハビリを受けられることが特徴です。介護保険の入所施設の中で、自宅での生活を大きな目標に掲げているのは、介護老人保健施設だけとなります。
入所する条件は
介護老人保健施設に入所するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず一つ目の条件は、原則65歳以上(40歳~64歳の特定疾病の場合も可能)で要介護1以上の介護認定を受けていることです。介護老人福祉施設である特養の場合は、原則、要介護3以上でないと入所できません(40歳~64歳の特定疾病の場合も可能)ので、介護老人保健施設は、比較的軽度の高齢者でも利用することが可能という点です。
二つ目は、リハビリや医療ケアを受けて、自宅での生活を高齢者本人が目指していることが条件です。介護老人保健施設は、終の棲家ではありません。一定の期間を決めて入所し、再び自宅での生活を送れる人が入所対象となりますので、積極的に退所後のサービス調整やリハビリがおこなわれます。
サービスの内容
介護老人保健施設には、あらかじめ様々な専門職を配置することが法令で定められています。リハビリや医療ケアを提供するために、医療スタッフの配置が手厚くなっていますが、病院ではないので介護福祉職も活躍しています。
この章では、介護老人保健施設においてどのような専門職がサービスに関わっているのか、役割と併せて具体的に紹介していきます。
食事介助
高齢者が安全に食事をおこなうときには、箸やスプーンを使って食べ物を口まで運び、よく噛み、むせることなく飲み込む能力が必要です。利き手に麻痺があって食べ物が口へ運べなかったり、飲み込む力が低下したりして誤嚥のリスクがある高齢者には、様々な専門職が食事の支援に関わります。
介護職員は、口に運べない動作を一部介助して、高齢者にあった量や速さで手伝います。看護師は、食事中の体調や処方された薬が飲めているか、毎食確認をおこないます。リハビリスタッフは、座っている姿勢や食事動作を確認し、リハビリの効果やプログラムの見直しをおこないます。栄養士は、一日の摂取カロリーを計算し、栄養バランスを考慮して献立を考え厨房と連携します。様々な専門職がそれぞれの役割を担い、食事の時間が高齢者の楽しみになるようサポートしています。
入浴介助
入所している高齢者にとって、入浴することは、身体の清潔を保つだけでなくストレスの解消にもつながる重要な機会です。身体の状態や能力に応じて適切かつ安全に入浴できるように介護老人保健施設には、さまざまなタイプの浴槽が用意されています。
自分で歩いて入浴できる高齢者には手すりが設置された一般浴室、椅子に座って姿勢が保持できる高齢者には機械浴、寝たきりの高齢者には特殊寝台で寝たまま湯に浸かれる特殊浴槽などが用意されています。
入浴の時間は一人ひとり看護師が体調管理をしながら、介護職員は洗身や移動の介助をおこないます。看護と介護が連携し、高齢者のプライバシーや尊厳を守りながら、安全で快適な入浴の時間が送れるよう介助することが重要となります。
排泄介助
排泄介助とは、ひとりでトイレに行けない高齢者に対して用を足すまでの動作を手伝う行為やパットやおむつを交換するなど排泄に関する一連の介護をいいます。
介護職員は、高齢者のズボンの上げ下げや便座から立ち上がる際に体を支えるなどの一部介助をおこなったり、トイレに行けない高齢者のおむつを定期的に交換し、陰部の清潔を保つことが主な排泄業務です。
看護師は排便の頻度や便秘、下痢などの様子を観察しながら、服薬調整をおこないます。また体調不良や異変の有無について主治医と連携しながら、疾患があれば早期対応をおこないます。
リハビリテーション
介護老人保健施設にはリハビリテーションのために専門職が配置されています。
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が主なリハビリテーションをおこなう専門職ですが、それぞれアプローチの視点が異なりますので、特徴を紹介します。
・理学療法士は、関節の可動域や運動の訓練をおこない、熱・電気などの物理療法によって、身体機能の改善をサポートする専門職です。
・作業療法士は、食事や掃除、外出など生活に関する様々な作業を活用しながら、日常動作の改善をサポートする専門職です。
・言語聴覚士は、話す・聞く・食べる機能に支障がある人に対して、発音訓練や運動を活用しながら言語や聴覚機能の改善をサポートする専門職です。
施設によってリハビリ職種や働いているスタッフ数は違いますが、高齢者の心身状態や疾患に応じて専門的なリハビリを提供しています。介護職員や看護師は、日頃の入所生活の中で、高齢者の状態や変化に気をつけながら、必要があればリハビリスタッフに連絡して情報共有をおこないます。
介護老人保健施設のお仕事は?
介護老人保健施設には多くの部署があり職種も様々です。
常勤医師(1名以上)、看護師(准看護師含む)、介護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、支援相談員、ケアマネージャー、栄養士、薬剤師、調理師、事務員などのスタッフによって支えられています。
介護職員は主に利用者の介助を行い、他のスタッフと協力してリハビリ内容を見直したりすることもあります。
介護老人保健施設の業務内容と一日の流れ
まずは朝・昼のお仕事の一例をご紹介いたします。
朝・昼は日勤と呼ばれ、時間帯は朝の8時半から17時半くらいまで担当します。
施設によって異なることもあるので、時間帯については最初に確認しておいた方がよいでしょう。
8時30分~ | 朝出勤したら、まずは職員のシフトと1日全体の流れを把握します。他のスタッフから介護記録を聞くなどのチェックを行い、体調を崩している方がいないかなどを確認します。 |
8時40分~ | 次に夜勤担当者から引継ぎを行い、担当予定の入居者の状態や様子を確認します。朝のミーティングでは各部署のスタッフが集まり、夜勤間の出来事や問題について共有します。 |
10時00分~ | 排泄、入浴の介助、ベッドのシーツ交換、新しく入所する方の対応などを行います。 |
12時00分~ | 昼食の介助が始まり、食事の後は口腔ケア、医師による回診を行います。 |
14時00分~ | リハビリの職員と共にリハビリの補助を行います。 また、入所者の方が楽しめるような企画・催しを行います。 |
16時00分~ | 入所者の1日の様子や食事量・排泄量などを記録し、報告書を作成します。各部署から集まってミーティングを行い、利用者の状態確認、見直すべきケアがあるかなどを相談します。 |
17時00分 | 日勤の報告、夜勤担当者へ引継ぎ事項などの記録をし、利用者を夕食のため食堂へ誘導します。 |
17時30分 | 退勤します。 |
夜勤勤務の場合は?時間帯と業務内容
利用者が絶えず滞在している介護老人保健施設には、夜勤の担当もあります。
夜勤勤務の時間帯は夕方5時から翌朝9時までという施設が多いですが、詳細な時間帯は施設によって異なります。
また、シフト制なのか、日勤・夜勤の専任が決まっているかなど、施設によって勤務体制に違いがあるため、就職活動中に確認しておきましょう。
17時00分~ | 日勤担当者からの報告、夜勤担当者へ引継ぎ事項などを確認します。その後、ミーティングを行い、夜勤中に気を付けるべき点などを共有します。 |
18時00分~ | 夕食の配膳や介助を行います。夕食が終わったら口腔ケアや与薬を行います。 |
20時00分~ | 就寝の準備をします。利用者の状態に応じて、着替えに介助が必要な利用者や、おむつの交換が必要な利用者の介助を行います。 |
21時00分~ | 施設内の見回りをします。利用者が眠れているか、体調を崩している利用者はいないかなど確認します。必要に応じて排泄介助やおむつの交換を随時行います。 |
6時00分~ | 翌朝になると利用者に挨拶を行い、着替え・洗面・排泄介助・バイタルチェックなどを行います。 |
7時00分~ | 朝食の配膳や食事介助を行います。 |
8時00分~ | 夜間の出来事の報告、日勤担当者へ引継ぎ事項などの記録をします。食事がきちんと食べられていたか、排泄物に異常がないか、体調に異変がないかを詳細に記録します。 |
9時00分 | 夜間の出来事の報告、日勤担当者へ引継ぎ事項などの記録をします。食事がきちんと食べられていたか、排泄物に異常がないか、体調に異変がないかを詳細に記録します。 |
仕事のやりがいと注意点とは
人と接する仕事なので、笑顔を意識して明るく対応することが重要です。
また、介護老人保健施設には様々な要介護者の方がいるので、一人ひとりに合わせた介護を行うことが大切です。
手伝いすぎると利用者が自分でできることを制限してしまいかねません。
どうすれば自立の目標に到達できるのかを考え、利用者の目線に立って一緒に実行することが何よりのやりがいといえるのではないでしょうか。
知っておくべき介護老人保健施設の特徴
どこの介護老人保健施設で働くかを考えたとき、施設の特徴を知っておくことが必要です。 そうすれば、自分の働き方にあった施設を見つけることができるでしょう。
勤務施設によって福利厚生は様々
働くうえで気になる福利厚生ですが、これは一般企業と同じく、実際に働く施設によって異なります。
施設によってはお子さんのいる方でも働きやすいように無料で利用できる託児所が用意されているケースや、保育園の補助金を負担してくれる保育費補助制度を設けているケースもあります。
また、資格取得の支援や、インフルエンザ予防接種を行っている施設もありますので、選択肢として福利厚生の内容で選定してみるという方法もおすすめです。
気になるお給料は?資格を取得することでお給料が上がる?
厚生労働省が発表している令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、介護老人保健施設では保有資格がある場合の平均給与額は約34万3千円、資格なしの場合は平均給与額が約28万6千円でした。
施設形態 | 保有資格あり | 保有資格なし |
介護老人保健施設 | 343,330円 | 286,330円 |
※参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」
介護老人保健施設では、資格が無くても勤務できる場合もありますが、資格を取得していることで給与額に違いが出るのは明確なようです。
資格名 | 平均給与 |
介護福祉士 | 350,380円 |
社会福祉士 | 379,670円 |
介護支援専門員 | 395,950円 |
実務者研修 (介護職員基礎研修およびヘルパー1級) | 310,460円 |
介護職員初任者研修 (介護職員初任者研修およびヘルパー2級) | 316,490円 |
※参考:厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」
資格の有無だけで5万円ほどの差があります。もちろん、月収は働き方や経験によってもお給料は変わります。
しっかり稼ぎながら資格も所得したいという方は、福利厚生に資格取得の支援がある施設で働くという選択肢もありますよ。
介護老人保健施設の人員配置は?
介護老人保健施設では人員配置が厚生労働省より基準が定められています。
下記は入所定員が100名の場合の人員配置です。
- 常勤医師1名以上
- 看護職員9名以上
- 介護職員25名以上
- 理学療法士、作業療法士(もしくは言語聴覚士)1名
- 介護支援専門員1名
- 栄養士1名
介護老人保健施設は部署が多いのでスタッフ数も多くなります。
上記以外にも調理員や事務員など、多くの方が運営に携わっています。
介介護老人保健施設と介護老人福祉施設の違いは?
介護老人保健施設と介護老人福祉施設はどちらも介護保険制度上の入所施設です。たとえ建物の外観や施設の雰囲気、働いているスタッフを見学したとしても、双方の違いは明確には分かりません。
この章では、施設の目的や職員配置、取組みを比較してそれぞれの役割を紹介します。
職員配置による違い
介護老人保健施設と介護老人福祉施設の一番の違いは、双方の目的にあります。介護老人福祉施設である特養は、生活施設としての機能があるため、生きがいづくりや生活介護がサービスの中心となります。一方、介護老人保健施設は、自宅復帰が目的なので、短期間に集中して必要なリハビリや医療ケアを提供することがサービスの基本方針となります。ですから、配置される専門職の数や対象となる要介護度は、同じ入所施設でも大きく異なっています。双方を表でまとめましたので、比較してみましょう。
専門職 | 介護老人保健施設 (100床) | 介護老人福祉施設 (100床) |
施設の目的 | 自宅復帰のため必要な医療・介護ケアをおこなう | 要介護高齢者に生活介護サービスを提供する |
対象となる要介護度 | 要支援1以上 | 要介護3以上 |
生活相談員 | 1人 | 1人 |
看護師 | 10人 | 3人 |
介護職員 | 24人 | 33人 |
リハビリ専門職 | 1人 | 0人 |
自宅への復帰に関する取組の強化
介護老人福祉施設とのもう一つの違いは、高齢者の自宅復帰を点数評価しているということです。国は平成30年の介護報酬改定で自宅復帰要件を満たした介護老人保健施設を、「超強化型」「強化型」「加算型」「基本型」「その他型」の5種類に区分しました。当然自宅復帰率が高い施設のほうが報酬が高くなります。
(評価指標となる5項目)
・在宅復帰・在宅療養支援等指標を点数で評価
・退所時指導などをおこなっている
・リハビリテーションマネジメントをおこなっている
・地域貢献活動をおこなっている
・充実したリハビリをおこなっている
介護の転職は介護老人保健施設がおすすめ
介護老人保健施設で働くメリット
介護老人保健施設で働く介護職員にとって、最も大きなメリットは、他の福祉サービスに比べて医療に関する知識が身につくという点です。同じ入所施設でも特養や特定施設のような生活施設と比べて、提供されるサービスはリハビリや経管栄養など医療ケアが中心となります。
医師や看護師、リハビリスタッフなど医療チームと日頃から連携できることは、介護職員にとって他では得られない介護老人保健施設ならではの特権といえます。
もしも介護職員として今後他の福祉サービスに転職したとしても、介護老人保健施設で得た医療知識や培った経験は、必ず次の仕事に役立つでしょう。なぜなら医療ケアの意義やリハビリの効果、医療職の専門性など実践で得た経験は、必ず介護場面でも役立ち、あなたの専門性を高めてくれることは間違いありません。
介護老人保健施設で働くデメリットは?
介護職員は突然のトラブルや、利用者の体調によってケアを変えなければならないので常に柔軟な対応力が求められます。
介護老人保健施設ではリハビリやレクリエーションが多いので、利用者の直接的なケア以外にもレクリエーションの準備やリハビリの送迎など、多くの業務を担当しなければならないこともあります。
そのため、時間の使い方を工夫するように意識しましょう。
まとめ
介護老人保健施設は病気で退院した方にとって、自宅へ戻るためにリハビリを頑張りたい方が利用する場所です。
利用者の皆さんは、要介護のレベルに差はありますが、一人ひとりが回復後への目標を持っています。
誰かの役に立ちたい、目標に向かって利用者と一緒に頑張りたいという方にとっては非常に魅力的なお仕事といえます。
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