いまさら聞けない「特養」とは！？

特養は「特別養護老人ホーム」の略称で、24時間365日介護サービスを提供する入所施設のことです。平成12年4月介護保険制度のスタートと同時に、それまで運営されていた特別養護老人ホームは、すべて介護老人福祉施設という介護保険サービスの一つに位置づけられました。
これにより特養は、介護保険を利用して要介護高齢者が気軽に利用できる社会資源となったのです。この記事では、特養の主な特徴や利用料金、具体的なサービスやその内容について説明していきます。

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特養の特徴

特養は介護保険サービスの一つ「介護老人福祉施設」として位置づけられており、条件を満たせば保険制度を活用して入所することができます。
介護保険が始まる以前は、特養の入所を市町村が措置により決定していましたが、現在は高齢者本人が入りたい施設を選び、直接施設と契約すれば入所できるようになりました。ですから高齢者が急に要介護状態になったり、自宅での生活が難しくなったりした場合、空きさえあれば全国どこの特養に入所することが可能です。

【利用料金例】
●要介護3
・介護サービス費(多床室)：21,360円
・介護サービス費(ユニット型個室)：23,790円
・食費：43,350円

●要介護4
・介護サービス費(多床室)：23,400円
・介護サービス費(ユニット型個室)：25,860円
・食費：43,350円

●要介護5
・介護サービス費(多床室)：25,410円
・介護サービス費(ユニット型個室)：27,870円
・食費：43,350円

※費用は月額です。
※居住費に多床室は25,650円、ユニット型個室60,180円＋αされます。
この表はひと月にかかる特養の利用料金表の一例です。入居する居室タイプによって介護サービス費の負担金が異なります。

この金額をもとに最も安いパターン、最も高いパターンをシミュレーションすると次のようになります。

● （最安）要介護3で多床室に入所。1ヶ月90,360円の負担（食費を加えて計算）
● （最高）要介護5でユニット型個室に入所。1ヶ月131,400円の負担（食費を加えて計算）

要介護度に応じて介護サービス費が異なるのは仕方ないですが、同じ特養でも入所する居室が多床室か個室によって、35,000円程の差があるのが分かります。

なお、介護サービス費の自己負担額は1割として計算していますが、対象となる高齢者が単独世帯で1年間の合計所得が280万円以上の場合、2割もしくは3割負担となります。申込する前にしっかりと確認することをお勧めします。

入所できる条件とは

特養に入所するには要介護３以上の介護認定を受けていることが条件となります。そもそも介護認定は、軽い方から要支援1、2、要介護1から5の7段階に区分されています。つまり特養へ入所出来るのは、要介護３以上となる中重度の要介護高齢者ということです。
介護認定は、要介護度が決まったあとも、定められた期間が過ぎれば認定を更新することになります。ですから現在要介護1であっても、更新をして要介護3以上の認定を受ければ特養へ入所申込みがおこなえます。
ちなみに定められた期間までに、高齢者の状態が軽減もしくは悪化した場合、認定変更の申請をすることで、再調査を受けることが可能です。

特養で提供されるサービス

特養では、24時間365日必要な介護サービスが提供できる体制が整っています。スタッフも介護職員だけでなく、看護師や機能訓練指導員、施設ケアマネジャーや栄養士など様々な専門職がチームでサポートしてくれるのが特徴です。
入居している高齢者がどうすれば安全で快適な生活がおくれるか、それぞれの専門性を活かして、カンファレンスや個別計画書を作成し、チーム全体で生活を支援してくれます。具体的なサービス内容と専門スタッフの役割を紹介しましょう。

食事介助

高齢者にとって日々の食事を美味しく食べることは、生きがいにつながります。
栄養士は、一日の摂取カロリーを計算し、栄養バランスを考慮して献立を考えるのが主な役割です。看護師は食事が始まると、高齢者一人ひとりの歯や口、飲み込みに問題がないか、薬を飲み忘れていないかなど確認しながら、特養全体の食事の様子を見守ります。
介護職員は高齢者の状態に合わせた食事形態や食事方法、場所を設定し、一人では食べにくい高齢者には、食事動作や飲み込み、食べ残しがないよう必要な介助をおこないます。

入浴介助

入浴は、健康増進や身体保清、ストレス解消など高齢者にとって大切な時間です。
特養では一般の浴槽では入浴できない高齢者のために、介護職員と看護師が入浴の介助をおこないます。介護職員は、高齢者が洗いにくい場所を手伝ったり、湯や浴室の温度管理をしたりしながら、快適に入浴できるように介助します。
看護師は、日頃の介護場面では把握できない高齢者の全身状態が、入浴するため裸になることで観察できる機会にもなります。高齢者の羞恥心に配慮しながら、皮膚の状態や傷の有無、栄養状況などを確認し、必要であれば薬の塗布やガーゼ交換などの処置をおこないます。

高齢者は皮膚が弱く、力を入れずにこすってもあざが残ったり皮膚がめくれたりすることがあります。入浴介助に関わるスタッフは、せっかくの入浴の機会を安全に安楽に過ごしてもらうために、特に慎重に対応しています。

排泄介助

排泄介助とは、ひとりでトイレに行けない高齢者に対して用を足すまでの動作を手伝う行為やパットやおむつを交換するなど排泄に関する一連の介護を排泄介助と呼びます。
介護職員は、高齢者のズボンの上げ下げや便座から立ち上がる際に体を支えるなどの一部介助をおこなったり、トイレに行けない高齢者のおむつを定期的に交換し、陰部の清潔を保つことが主な排泄業務です。
看護師は排便の頻度や便秘、下痢などの様子を観察しながら、服薬調整をおこないます。また体調不良や異変の有無について主治医と連携しながら、疾患があれば早期対応をおこないます。

スタッフにとって排泄介助は、排泄物の色や量、頻度や匂い等によって健康状態を推察することができるため、大変重要な業務です。入浴介助とおなじく、高齢者の羞恥心やプライバシーに配慮しながら、異変や介助方針に変更があれば多職種で情報共有し、その後の対応につなげてくれます。

レクリエーション

レクリエーションは高齢者にとっての楽しみの一つです。特養ではカラオケや体操など入居者全体でおこなう集団レクリエーションから、将棋やカードゲームなど少人数でおこなうレクリエーションまで様々なプログラムを実施しています。高齢者にとってレクリエーションは、様々な入居所と仲良くなったり、生活にメリハリが生まれる時間となったりします。

特養では高齢者の入所生活がより豊かになる大切な機会と捉えるところもあり、施設だけでなく保育園や地域住民との交流の場としてレクリエーション行事を企画しているところもあります。

その他

特養には機能訓練指導員が配置されており、高齢者個人に合わせた機能訓練メニューが設定されています。病院のリハビリ施設と違って、トレーニング器具や個別メニューが揃っている特養は少ないですが、日常の生活の中で体を動かしたり、手作業をしたりするなど心身機能の維持や向上につながるような取り組みがおこなわれています。

以上これら食事や入浴、排泄やレクリエーション一連のサービスは施設ケアマネジャーが中心となり、高齢者や家族の意向を汲み取りながら計画してくれます。施設ケアマネジャーは高齢者の好きなことやできる力を活用しながら個別介護計画を作成し、特養での生活を様々な専門職と一緒にサポートしてくれます。

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養護老人ホームとの違い

特別養護老人ホームと似た名称で養護老人ホームという施設があります。一見どちらも入所施設で「特別」と「そうでない」老人ホームと思ってしまいますが、両者は全く違う施設です。目的や特徴を表で比較してみましたので参考にしてください。

まとめ

特養への入所申込は、高齢者本人または家族が直接施設におこなうことになっています。今回ご紹介した介護サービスの内容は一般的なものであり、施設によっては独自の取り組みをしているところもあります。
また、費用負担について利用者負担の減免制度を導入して居住費や食費を割引しているところもあるので、入所を検討する際には直接施設に問い合わせてみたり、インターネットで調べてみたりして情報収集をしっかりおこなってから申し込むとよいでしょう。

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