介護の現場ではじょくそうは馴染み深いものですが、処置について疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
じょくそうの処置は医療行為であるため介護職は対応できません。しかし、じょくそうの予防につながるケアは介護士が実践できます。本記事では介護士がじょくそうの処置ができない理由と予防に役立てられる情報を解説しています。なぜ介護士は処置ができないのか理解を深め、予防に役立つ知識も併せて押さえておきましょう。
じょくそうとは?
身体の骨とベッドなどの間の皮膚が身体の重みにより圧迫されると、その部分の血流が悪くなり皮膚に栄養や酸素などが行き届かなくなります。すると皮膚に赤み・ただれ・傷などができてしまい、その状態をじょくそうといいます。
介護の現場において、じょくそうの処置は介護士が行ってもよいのでしょうか? 続いて、じょくそうの処置についてご説明します。
じょくそうの処置は医療行為にあたる
皮膚への軟膏の塗布は、条件を満たすと介護士でも行えます。しかし、じょくそうの処置は医師法第17条にも記載されている通り介護士では行えません。無資格で医療行為を行った場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。
介護士として業務を行う中で、自分の行為は医療行為にあたるのか疑問を抱く場面もあるかもしれません。資格がないにもかかわらずじょくそうの処置などの医療行為を行ってしまうと、自身が処罰の対象になるのみならず、ご利用者様の命も危険にさらしかねません。判断に迷った場合は医師や看護師に相談しましょう。
続いて、じょくそうの原因について説明します。
じょくそうの原因
原因は大きく分けて以下の3つがあります。
- 皮膚における原因
- 全身的な原因
- 社会的な原因
それぞれ具体的に解説します。
皮膚における原因
高齢になると皮膚が弱くなり、外からの刺激でダメージを受けやすい状態になります。弱くなった皮膚が汗や排泄物などによりふやけた状態で摩擦やずれなどのダメージを受けると、皮膚の中の血管が伸ばされやすくなります。すると、血流が悪くなりじょくそうができてしまうのです。
全身的な原因
病気や高齢になると食欲が低下するケースもあります。すると全身の栄養状態が悪くなり、痩せて骨が突出してしまうでしょう。すると、骨とベッドなどの間に挟まれている皮膚に圧力が掛かり、じょくそうにつながってしまいます。
社会的な原因
自分で寝返りができる方は無意識にじょくそうを予防できます。しかし、自力で寝返りができないと、家族や介護士の介助に頼ることになるでしょう。そのため、介護者の介護力や知識が不足しているとじょくそうができる原因になります。
続いて、じょくそうになりやすい方の特徴について説明します。
じょくそうになりやすい方
じょくそうになりやすい方は以下のような方です。
- 寝返りができない寝たきりの方
- 栄養状態が悪い方
- 皮膚が弱くなっている方 など
じょくそうの原因につながりやすい状態の方が当てはまるでしょう。また、特にじょくそうになりやすい病気もあります。
- うっ血性心不全
- 骨盤骨折
- 脊髄損傷
- 糖尿病
- 脳血管疾患
- 慢性閉塞性肺疾患
例えば、糖尿病の方は血糖値がコントロールされていないと皮膚の代謝が悪く、血液の流れも良くないため傷が治るのに時間がかかってしまいます。これらが原因でじょくそうになりやすい病気の中の1つとされています。
続いて、身体の中でじょくそうが発生しやすい部位を説明します。
じょくそうが発生しやすい部位
じょくそうが発生しやすいのは骨が突出している部位です。しかし、寝ている時間が長い方と車椅子などに座っている時間が長い方とでは、発生しやすい部位に差があります。
寝ている時間が多い方
寝ている時間が長い方のじょくそうが発生しやすい部位は、以下の通りです。
・後頭部
・肩甲部
・仙骨部
・踵骨部
・外踝部
・耳介部
寝ているときは右側臥位か左側臥位かでも、発生しやすい部位は異なります。例えば、右側臥位で寝ていることが多い方は、身体の右側に圧力が掛かっている時間が多いでしょう。そのため、右側の耳やくるぶしなどを重点的に観察しましょう。
座っている時間が多い方
座っている時間が長い方のじょくそうが発生しやすい部位は、以下の通りです。
・背部
・尾骨部
・座骨部 など
じょくそうは寝たきりの方に多いイメージですが、座っている時間が長い方にも発生します。座っている状態で自発的な動きをすると、臀部などにずれや摩擦が起こりやすくなります。臀部は座っている状態では最も体圧が掛かる部位のため、血流が悪くなることが原因です。
また、車椅子にクッションを使用する場合もあるでしょう。クッションの中でも円座クッションを使用してしまうと、局所的に円形の圧力が掛かってしまい、その不安定さからずれも発生します。
すると、じょくそうが発生するリスクが高まるため、体圧を分散できるように広範囲をカバーするクッションの使用が望ましいとされています。
続いて、介護士がケアで注意すべきポイントを解説します。
介護士が毎日のケアで注意すべき4つのポイント
介護士はじょくそうの処置を行えませんが、毎日のケアでじょくそうの発生は予防できます。毎日のケアで注意すべきポイントは以下の4つです。
- 皮膚状態の観察を欠かさない
- 皮膚の清潔を保つ
- 寝返りができているか確認する
- 糖尿病
- 介助時に摩擦を起こさないようにする
それぞれ詳しく解説します。
皮膚状態の観察を欠かさない
じょくそうは早期発見して対応することで悪化を防げます。初期のじょくそうの状態として皮膚の赤みがありますが、高齢者の皮膚は弱いためほかの原因で赤みが出ている可能性もあるでしょう。じょくそうか判断できる方法として「指押し法」があります。
指押し法は以下の手順で行います。
1. 人差し指で皮膚の赤くなっている部分を3秒ほど圧迫する
2. 圧迫したあとの皮膚の色を確認する
皮膚が白っぽく変色し、指を離すと再び赤くなる場合はじょくそうではありません。しかし、皮膚を圧迫しても赤みが消えない場合は初期のじょくそうと判断し、看護師などに相談しましょう。
指押し法以外にも、以下のような状態に注意が必要です。
・水ぶくれになっている
・ただれている
・皮膚が熱をおびている
・浸出液が出ている
上記のような皮膚の状態が確認できたら、看護師などに相談しましょう。皮膚状態は、日頃から接している介護士だからこそいち早く異変に気付けます。異変の早期発見のためにも、皮膚状態の観察を心掛けましょう。
皮膚の清潔を保つ
皮膚が汗や排泄物などでふやけてしまうと外部からのダメージに弱くなってしまうため、皮膚を清潔な状態に保つことが大切です。排泄物が付着しやすい陰部の洗浄や、皮膚を保護する目的でクリームなどの塗布が推奨されています。また、臀部を洗浄しても湿り気が残っていれば皮膚はダメージを受けやすい状態です。洗浄後は水滴を十分拭き取ることも忘れずに行いましょう。
寝返りができているか確認する
じょくそうは皮膚の圧迫により発生します。そのため、ご利用者様が寝返りができているか確認が必要です。自分で寝返りができていない方は、身体の同じ部分に圧力が掛かり続けないように介護士による体位変換の介助が必要です。同じ部分に圧力が掛かり続けると3~4時間でじょくそうが発生してしまう可能性があります。体位変換を行わないと全身の血液の流れが滞ってしまい、肺や心臓などの機能低下の原因にもなります。
また、体位変換を行う時間の間隔については、日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン」において以下のように推奨されています。
・体位変換は基本的に 2時間以内の間隔
・粘弾性フォームマットレス・上敷二層式エアマットレスを使用する場合、体位変換は 4時間以内の間隔
上記の内容を踏まえると、使用しているマットレスによっては4時間を超えない範囲の間隔で体位変換を行えばよいとされています。体位変換はご利用者様の身体を動かすため、睡眠の妨げになってしまう可能性もあるでしょう。そのため、画一的に2時間の間隔で体位変換を行うのではなく、使用している設備によって間隔を検討するとよいでしょう。
介助時に摩擦を起こさないようにする
摩擦やずれはじょくそうの原因になります。ベッド上での移動時はなるべく摩擦が起きないように注意し、シーツや衣類のしわもその都度直すように心掛けましょう。
また、皮膚が弱い高齢者にとって、摩擦やずれは表皮剥離などの怪我の原因にもなります。じょくそうの予防のみならず表皮剥離などを防ぐ目的でも、摩擦やずれは起こさないように注意しましょう。
まとめ
じょくそうの処置は医療行為にあたるため、介護士は行えません。しかし、日頃からご利用者様と接している介護士だからこそ、じょくそうの早期発見や予防につなげられるでしょう。
本記事でご紹介した介護士が毎日のケアで注意すべきポイントを押さえ、ご利用者様の健康維持につなげられるように役立ててみましょう。
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