寝衣交換は、体の不自由な方が気持ちよく清潔に過ごせるように衣服の取り換えを介助することです。一見簡単そうに見えますが、介護の現場ではさまざまな状態の利用者がいるため、利用者の体への負担やプライバシーに配慮しながら行う必要があります。
この記事ではスムーズな寝衣交換の手順やコツ、気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。
寝衣交換ってどんな介助?
寝衣交換とはどのような介助内容を指すのでしょうか?
ここでは、介助内容と目的について紹介します。
着替えの介助
寝衣交換はいわゆる、着替えの介助のことです。年齢や病気、麻痺などにより自分の思うとおりに体を動かせない方が着替えるのをサポートします。一口に、寝衣交換といっても利用者の体や意思疎通の状況に合わせて行う必要があり、臨機応変に対応することが必要とされます。特に介護を必要する人のなかには自分の気持ちを伝えられない方もいるため、利用者の体に最大限配慮しなければなりません。また、人に体を見られることは誰にとっても羞恥心を伴いますので、利用者の気持ちに寄り添ってプライバシーを守りながらの対応が求められるでしょう。
寝衣交換を行う目的
寝衣交換の主な目的は、利用者の「衛生管理」です。衣服には汗だけでなく、血液や唾液、排泄物、食べこぼしなどさまざまなものが付着します。体液などが付着した衣服をそのままにしておくと、皮膚トラブルを起こす可能性があります。特に高齢者は皮膚のバリア機能が低下しており、重症化しやすいため、寝衣交換によって皮膚を清潔に保つことが必要です。
また、清潔な衣服への着替えは利用者の心を安定させ、精神面でも大きな影響を与えます。このように利用者の体と心の衛生環境を整えることが寝衣交換の目的と意義と言えるでしょう。
寝衣交換の流れとコツ?
ここでは、利用者に負担を与えずにスムーズに寝衣交換をするための手順とコツを紹介します。
事前の準備
利用者の怪我や体調不良、ストレスを防ぐためにあらかじめ次の準備をしておきましょう。
〈環境の準備〉
・室温を22~26℃にしておく
・安全な寝衣交換ができるようにベッドの周りを整理する
・ベッドサイドの柵を外す
・声かけをしてからベッドの高さを介護者の腰の位置まで上げる
〈利用者の環境準備〉
・これから寝衣交換をすることを利用者に声かけする
・清拭を伴う場合は事前に尿意を確認し、必要があれば先に排泄を済ませる
・体位変換のときにベッドから落ちないように、利用者の位置を確認する
・体が露出しないようにタオルケットを近くに用意しておく
・新しい着替えの上着は上半身の横、ズボンは足元に用意しておく
・複数枚着る物がある場合は着る順番に重ねるか、可能なら袖ごと重ねておき、1回で着られる状態にしておく
〈その他の準備〉
・体位変換などで動くため、バイタルの異常がないか確認する
・嘔吐や失禁、出血による寝衣交換の場合、感染対策のためにスタンダードプリコーションに基づいた処置を行う
※スタンダードプリコーション
実際に感染症を持っているかに関わらず、全ての人が感染症を持っていると仮定して、汗以外の体液や排泄物への感染予防対策を行うこと。
上半身の着替えの流れ
上半身の着替えでは、次のような流れで介助をします。
前開きタイプ
〈手順〉
①前ボタンやひもを外す
②肩まで衣服を下げる
③介護者側を向いた状態の側臥位にして、上側の袖から腕を外す
※脱いだ部分は下になっている体の下部分に押し込む
④新しく着る衣服の半分を上側になっている半身に着せる
※衣服の袖口から介助者が手を入れて、利用者の手首を持ちながら袖を通す
⑤残りの半分は下になっている体の下側に押し込む
⑥今度は仰向けにして前に着ていた衣服を体の下から取り除く
⑦新しく着る衣服の残り半分を体の下からゆっくり引きだして着せる
⑧背中側の衣服のしわやたるみを伸ばす
〈コツと注意点〉
・側臥位のときは体位が安定するように、下側になっている足を少し曲げた状態にする
・側臥位のときは呼吸がしにくいので、利用者の体調を確認しながら行う
・胸部などが露出する場合はタオルケットをかけながら行う
・特に脱がせるときは関節の脱臼に気をつけ、肩→肘→手首の順で脱がせる
被るタイプ
〈手順〉
①胸元、肩甲骨あたりまで服をたくしあげる
②利用者の肘を曲げた状態で肘関節を持ち、衣服の脇あたり広げながら肘を衣服から外す
③袖口を広げて引っ張りながら片方の腕を脱がす
④反対側も同じように脱がす
⑤襟ぐりを広げて頭から上着を外す
⑥新しく着る衣服の襟ぐりを広げて頭がひっかからないように被せる
⑦衣服の袖口から介助者が手を入れて、利用者の手首を持ちながら袖を通す
⑧反対側も同じように通す
⑨利用者の背中を浮かせて上着の裾をおろす
※可能な場合は利用者自身で腰を浮かせてもらう
〈コツと注意点〉
・片麻痺がある利用者の場合、脱がすときは健側の腕から、着るときは麻痺のある腕から袖の着脱をする
・袖部分の着脱の際は、利用者の爪や指が衣服に引っかからないようにする
下半身の着替えの流れ
〈手順〉
①利用者の膝は90度くらいに曲げる
②利用者の膝を押さえながら、下半身を少し傾けてズボンを太ももまで下す
③利用者の足を伸ばして、ズボンをたぐるようにして足から外す
④新しく着るズボンをたぐった状態にして片足ずつ足首を通す
⑤膝を立てた状態で左右交互におしりの下あたりまでズボンを引き上げる
⑥下半身を少し傾けて腰までズボンを上げる
※可能な場合は利用者自身で腰を浮かせてもらう
〈コツと注意点〉
・利用者ができる範囲で動いてもらう(腰を浮かせる、ひねることが可能ならやってもらう)
ストレスを最小限に!寝衣交換で気をつけるべきポイント
①やれるところは利用者自身で
介護の基本的な考えと同様に、やれることは利用者自身で行ってもらいましょう。利用者の残っている能力を活用することは、心身の機能低下を予防することにつながります。
②利用者の可動域を把握しておく
寝衣交換では体を動かすことが多いため、利用者の可動域を事前に把握しておきましょう。特に筋力が低下した高齢者は脱臼しやすいです。慣れていない利用者の寝衣交換をする際は、腕や足、腰などがどれくらい動かせる状態なのか利用者情報を確認しましょう。
また、片麻痺がある利用者では「脱健着患(健側から脱ぎ、患側から着る)」を意識して、利用者の負担を少なくすることも大切です。
③室内の温度に気を配る
寝衣交換では体を露出するため、室内の温度は22~26℃に保っておきましょう。高齢者は体温調節機能が衰えており、自分では暑さや寒さを感じ取りにくくなっています。寝衣交換で風邪など引かないように室内の温度に配慮し、露出部にはタオルケットをかけながら対応しましょう。
④体調の変化がないか確認しながら行う
寝衣交換では体位変換など体を動かすことが多いので、利用者の体調を確認しながら進めるようにしましょう。特に側臥位は呼吸がしにくい体位なので、心臓や循環器に疾患を持つ利用者などに気をつけて対応する必要があります。
⑤皮膚トラブルなどについて観察する
皮膚の傷やあざ、褥瘡などができていないか確認しましょう。高齢者は皮膚のバリア機能が落ちており、重症化しやすいです。早期にトラブルを発見することで重症化を予防できます。
まとめ
寝衣交換は利用者の皮膚を清潔に保ち、健全な精神を保つために大切な介助です。利用者の体や認知機能の状態に合わせて、個別の対応を行うことが求められます。また、利用者の皮膚トラブルに気づくきっかけにもなるため、さまざまな視点で観察することを心がけるようにしましょう。
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