現在、大学や短大、専門学校への進学率は全体の8割を超えています。そんな中、奨学金制度を利用する学生も少なくないでしょう。こうした若い世代の負担を軽減するため、介護職員に向けた奨学金返済・育成支援事業が存在するのをご存じでしょうか?
この記事では奨学金返済・育成支援事業の概要や自治体の例、利用するときの注意点について詳しく解説します。介護関係の仕事を目指していて、奨学金の返済やキャリアアップの資金に不安があるという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
介護職員奨学金返済・育成支援事業とは?
地域の介護人材を確保するための自治体ごとの事業
奨学金返済・育成支援事業は地域における介護人材の不足に対処すべく、若い世代の地域への定着を目指すための制度です。自治体内における介護保険施設等で勤務する介護従事者に対して、奨学金の返済額の一部を補助したり、新たに介護関連資格を取得するための支援などを行います。
これらの事業は自治体ごとに行っており、制度自体の有無や詳しい補助内容、対象者には地域によって違いがあるため、注意が必要です。
介護職員奨学金返済制度とは
介護職員として働く人に対して奨学金返済額の一部を補助する制度です。対象者に直接費用を援助するケースもあれば、働いている事業所を通して支払われるケースもあります。
また、基本的に対象となる事業所にも規定があり、該当の自治体にある介護保険サービスを提供する事業所とされています。詳しいサービス内容が定められている自治体もあるため、必ず確認しておくようにしましょう。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は制度の対象外になっている自治体も多いので、注意が必要です。
介護職員育成支援制度とは
介護の仕事に携わりながら、キャリアアップのための資格取得を支援する制度です。介護に関する研修や資格取得に要する関連費用などの一部を補助し、キャリアアップにかかる負担を軽減します。
特に次のような資格を目指すときに役立つでしょう。
〈対象となる資格の例〉
・介護職員初任者研修
・実務者研修
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
・介護福祉士
介護職員奨学金返済制度の例
実際に、奨学金返済制度を設けている自治体について紹介します。
東京都
東京都内の介護保険サービス提供事業所で働く介護職員を対象に返済金を補助する制度。介護福祉士の資格を持っていないことが条件で、働きながら最終的に介護福祉士の資格を取得することを目的とするキャリアアップのための事業でもあります。
事業者を通じて手当として補助金は支給され、年に60万円を上限としています。補助期間は最長5年間です。条件として次のような段階的なキャリアアップが求められます。
補助開始してから
①1年以内:介護職員初任者研修の修了
②3年以内:実務者研修の修了
③4~5年以内:介護福祉士国家試験を受験(合否は問わない)
無資格からでも奨学金の補助を受けながら、資格取得も目指せる制度です。
※参考: 東京都福祉局「介護職員奨学金返済・育成支援事業」
岩手県盛岡市
盛岡市内の介護保険サービス事業所に勤務する人であれば、介護職員以外も対象としています。1年以上の雇用契約を結び、常勤であれば正規雇用でも非正規雇用でも補助を受けられるため、要件が他に比べて厳しくないのが特徴。
また、産休や育児休業等のよる長期休業中であっても、雇用契約が継続されている限り、補助も同様に継続されます。補助額は月に6,500円を限度とし、返還月額の1/2以内と定められています。最長5年間補助を受けることが可能です。
※参考: 盛岡市公式ホームページ「介護職員奨学金返還支援補助金について」
介護職員育成支援事業の例
介護職員育成支援事業を行っている自治体の例は以下のとおりです。
新潟県新潟市
介護職員のキャリアアップのための研修の実施や資格取得にかかる費用を負担している介護保健サービス提供事業所に対して、市が経費の一部を補助する制度です。
こうした制度が普及することで、資格取得への支援を充実させる事業所が増え、介護従事者のキャリアアップにかかる負担が軽減されるでしょう。
補助対象の経費は次のとおりです。
〈補助対象の経費〉
・講師への謝礼
・資料やパンフレットなどの印刷費
・会場使用料(外部施設を利用した際の費用)
・資格取得に関わる受講料
・交通費や宿泊費
・活動に伴う消耗品の経費(3万円未満)
神奈川県川崎市
キャリアアップ支援として市が痰吸引をはじめとする様々な研修を開催し、介護職員の学びの場やキャリアアップの機会を設けています。川崎市は介護人材の獲得と定着のため、「呼び込み」「就労支援」「定着支援」「キャリアアップ支援」の4つに力を入れているのが特徴。定着支援として職場環境の改善のために管理者向けの研修の開催や、相談窓口を設けてメンタルヘルスにも働きかけています。様々な角度から介護人材を守ろうとする働きかけがあり、キャリアアップだけでなく、長く働きたい環境作りにも注目している印象を持ちます。
その他の介護職員支援制度
奨学金返済・育成支援事業以外にも介護職員を支援するための事業を独自に設けている自治体も存在します。
広島市
介護・保育に関わる人材不足に対して、地域の行政・事業者・スーパーなどが協力し、介護・福祉に関わる職員の福利厚生をサポートする事業を実施しています。介護保険サービス事業所や障害福祉サービス事業所、保育園などに勤務している職員を対象に買い物割引サービスや年間12,000円分のポイント付与などをサービスを提供。介護や保育人材の需要は高まる一方で、人材不足が問題になっている原因には給与や社会的評価の低さが指摘されています。国でも介護・保育業界の処遇改善に取り組んでいますが、広島市では国の政策を補う形で、介護職員の支援に力を入れています。
介護職員奨学金返済・育成支援事業を利用するときの注意点
奨学金返済・育成支援事業は介護職を目指す方やキャリアアップを目指す方にとって、とてもメリットの多い制度です。しかし、利用には次のポイントに注意する必要があります。
①すべての自治体に制度があるわけではない
奨学金返済・育成支援事業は全ての自治体で行われているわけではありません。奨学金返済事業か育成支援事業のどちらかのみある場合や、どちらの事業も行われていないケースもあります。そのため、事業の利用を考慮して進学する方やキャリアアップを目指す方は、あらかじめ働きたい施設のある自治体にこうした事業が存在するのか確認するようにしましょう。
②自治体ごとに詳しい要件が異なる
事業の対象者や援助の金額などの詳細は、自治体によって異なります。市内在住が必須であったり、資格の有無や、支給時期の違いなど、自治体によって規定に違いが多いため、必ず事前に確認するようにしましょう。
また、他の奨学金返済制度を使用している場合に併用できるかどうかも自治体によって判断が異なるため、注意が必要です。
③同じ自治体に数年間働く必要がある
奨学金返済・育成支援事業のほとんどは、自治体内に住所がある施設・事業所で働いていることが支援を受ける条件となっています。そのため、指定された数年間は同じ自治体で働かないといけません。
また、なかには自身の住所も市内在住であることが必須である自治体もあるため、働く場所・住む場所の地域が限定されることは覚悟しておく必要があるでしょう。
まとめ
奨学金返済・育成支援事業は各自治体の介護人材の不足や他への流出を防ぐために、奨学金返済額の一部を補助したり、キャリアアップにかかる費用を軽減したりする事業です。事業の対象者や内容はそれぞれの自治体によって異なるため、介護職を目指す方やキャリアアップを望む方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
ミラクス介護の特徴
- 介護業界では最大級の求人数を保有しています。
- 介護の専門知識を有するコンサルタントがサポート。
「ミラクス介護」に登録するメリット
- 求人情報には載っていない、評判や施設情報を提供します。
- 無料で履歴書・職務経歴書を添削します。
- 無料で面接対策をサポートします。
- 登録した方限定で、ご案内可能な求人があります。
上記の特徴のようにあなたの転職を全力でサポートさせていただきます!
伺った希望条件からピッタリの求人をピックアップすることやお給料・勤務時間などの待遇面の交渉などをあなたに代わって、弊社のコンサルタントが行います。きっとあなたが希望するお仕事を見つけることができます。
ご相談をお待ちしております!