介護のスキルアップ

リスクマネジメントは介護現場において大切!|リスクマネジメントの方法や事故事例を解説

高齢化が進む中で介護事故は増加傾向にあります。そんな介護事故を予防するためにはリスクマネジメントが重要となります。
この記事ではリスクマネジメントの重要性と方法、事故事例について解説します。

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介護現場のリスクマネジメントとは?

高齢者は加齢とともに身体機能の低下とともに心も不安定になりやすいです。そうした心身のアンバランスから、転倒をはじめとする事故が多発しています。高齢者の事故は命やその後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を脅かしかねません。リスクマネジメントはこうした高齢者施設での介護事故を予防するための取り組みのことを言います。

【リスクマネジメントの取り組み】
・実際に起きた事故を分析して再発防止に取り組む
・日常に潜む介護事故につながりかねないリスクを発見して防止策に取り組む

介護におけるリスクマネジメントは重要

【特別養護老人ホームで発生する事故】

事故類型事故全体に対する割合
1位転倒50.0%
2位誤嚥9.3%
3位転落9.3%

【特別養護老人ホームで事故が発生した業務場面】

順位場面事故全体に対する割合
1位歩行・移動中29.8%
2位食事中10.9%
3位入浴時10.6%

※参考: 厚生労働省「「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について

高齢者の介護事故では、移動中や食事、入浴時などの日常生活の中で事故が起こっていることが多く、日々の生活の中にさまざまリスクが潜んでいることがうかがえます。転倒をはじめとする高齢者の事故は、寝たきりになったり、命にかかわるなどの心身への重大な影響が考えられます。そのため、事故をあらかじめ予測して対策しておくことが非常に重要とされます。

リスクマネジメントの目的

リスクマネジメントの目的は大きく次の3つになります。

利用者の安全を確保する

リスクマネジメントは利用者の安全確保が一番の大きな目的と言えます。高齢の増加とともに、心身機能の低下している高齢者の事故は年々増えています。高齢者が安心して介護サービスを受けるには、周囲の職員が高齢者の状態、環境などのさまざまな面に配慮する必要があります。

職員を守る

リスクマネジメントは利用者を守るばかりではなく、職員を守ることにもつながります。介護事故の現場にいた職員は精神的に大きな影響を受けます。事故後の利用者や家族への対応から、「あのとき、こうしておけば」と自分をより責める方もいます。
また、介護事故によって職員自身もケガをしてしまう可能性もあります。(支えていた職員も一緒に転ぶ等)介護事故には多数の要因があります。介護器具の不調や段差などの環境要因から発生する事故もあります。職員が心身ともに安全に働けるようにするためにもリスクマネジメントは必要となります。

サービスの質を高める

リスクマネジメントは介護サービスの質を高めます。介護事故を予防する観点から利用者の安心と安全を確保することは、結果的に業務の効率化にもつながります。介護事故を未然に食い止めることは施設の評価にも影響します。

介護現場における事故、ヒヤリハットの事例

介護現場における事故は、主に次の3つの要因からなります。

事故の要因具体例
利用者の状態・身体機能の低下(ふらつきなど)
・精神に不安定(急に立ち会がるなど)
職員の状態・忙しくて時間がない
・利用者情報の共有不足
環境・段差
・車いすなどの福祉器具
・ベッドの高さ

こうしたさまざまな要因から介護事故が起こることを想定して、体制整備や職員教育、環境改善、マニュアル整備などの多方面から対応策を検討する必要がある。

事例対応策
ベッドから車いすに移乗する際に、利用者がお尻から落ちた・介助者2名以上で移乗する
・車いすとベッドの配置の改善
・必ず声だし確認を行う
施設内を散歩中に利用者が転倒した・利用者状況の把握と周知
・段差を無くすなどの環境整備
浴室を移動する際に支えていた職員の手が滑り、利用者が床に転落した・業務マニュアルの作成
・利用者の身体状況の再評価、周知
ミキサー食が喉に詰まり、利用者が誤嚥した・各テーブルに職員を配置
・食形態の再検討
・誤嚥の対応を再研修
・食事摂取の状況観察

※参考: 厚生労働省「「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について

介護リスクマネジメントの方法

介護リスクには数多くの要因があります。実際に介護現場において、リスクマネジメントするにはどのような方法があるのか。リスクマネジメントの方法について詳しく解説します。

体制作り法

リスクマネジメントは継続的かつ体系的に取り組む必要があります。そのため、施設内の管理部門として「安全管理委員会」などを設置しましょう。医師や看護師、介護士、リハビリスタッフ、栄養士などのさまざまな職種のスタッフを構成員として取り組むことで、現場の声を尊重した体制作りにつながります。安全管理委員会には次のような役割があります。

・ヒヤリハット/事故報告の集計、評価
・事故が起きた場合の対応指針の整備
・マニュアル整備の検討
・事故防止の啓発活動
・リスクマネジメントに関する研修の実施

安全管理委員会を軸としたリスクマネジメントの体制を作ることで、継続的かつ体系的なリスクマネジメントの管理が可能となります。

情報の収集・発見

リスクを分析するためには、情報収集による現状の把握が必要です。ヒヤリハット報告や事故報告を職員から積極的に収集しましょう。

ヒヤリハット:事故につながりかけたハッとした出来事
事故:サービスの過程で身体的被害や精神的被害があった出来事

ヒヤリハットは事故の入口と考えられています。ハインリッヒの法則をご存じでしょうか?
1つの重大事故は、29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットの積み重ねで起こるという労働災害に関する経験的な法則のことです。
つまり、日々起こるヒヤリハットを少なくすることは、重大な事故の発生を防ぐということです。そのため、ヒヤリハットや事故の報告を集めることが重要となります。

報告は職員を責めるためのものではなく、事故を未然に防ぎ、ケアの質を高めるために必要としていることを周知して、積極的に報告しやすい職場の風土を作ることも必要となるでしょう。
また、施設に寄せられる苦情収集もリスクマネジメントにとって重要です。苦情は耳の痛くなるイメージがありますが、苦情の裏には事故につながるリスクが隠れている可能性があります。
苦情と向き合い、解決するように取り組みましょう。

リスク・事故の分析と対応

リスクへの対応

収集した情報からリスク要因となり得るものを特定し、リスクへの対応方法を検討します。リスクは優先度を見積もり、その優先度の順で対応していきましょう。

【リスクへの対応方法の例】
・介護手順のマニュアル整備
・職員への研修(職員教育)
・環境面への働きかけ(段差をなくす、スロープを設置するなど)
・利用者の状況を情報共有
・道具の利用(福祉用具、個人防護具)

介護事故の防止にはケアの「標準化」と「個別化」のバランスが大切になります。手順を標準化したマニュアルを作ることで、ケアのレベルを保ち、業務の効率化にもつながります。手順が定まることで、事故の原因特定もしやすく、業務改善も容易となるでしょう。
しかし、利用者1人1人の状況は異なりますので「標準化」に加えて、「個別化」を図る必要があります。利用者のニーズをよく観察し、その方に合った援助方法の検討も重要になります。リスクへの対応として、こうした事故防止の観点も含めた業務マニュアルの作成と利用者の状況把握と周知は、共通して必要なポイントとなります。

事故への対応に備える

実際に事故が起こってしまった場合に備えて、対応指針を周知しておく必要があります。事故直後は慌てやすいため、事故発生時の業務フローの用意が必要です。利用者の人命と安全の確保を最優先とし、医療機関や施設内の連絡体制の構築、記録をとる係はだれかなどをあらかじめ示しておき、迅速な対応ができるように準備しましょう。
実際に事故が起こってしまった場合にどれだけスムーズに対応し、誠意のある対応を見せられるかは施設の質にも関わります。さまざまな事故パターンから対応方法を検討するようにしましょう。

実施結果の把握・記録集め

リスクへの対応と軽減措置の実施結果を集めましょう。こうした記録を集めていくことで、今後のリスクマネジメントの改善につなげることが可能です。
また、近年の介護現場では福祉サービスの記録が重要視されています。そのため、客観的にわかりやすい文章に統一されるように記録方法を明確化したり、業務負担とならないように記録用にシステムを導入することも検討してみてください。

評価・周知(研修)によるリスクのコントロール

マニュアル等の整備により整えてきたリスクマネジメントの仕組みを運用していきます。
また、リスクマネジメントは誰かひとりが気を付けても意味がありません。事故を防ぐには、職員全員がリスクマネジメントを推進する意識が大切となります。
そのため、定期的に職員向けのリスクマネジメント研修を実施したり、啓発活動を行うことで、職員1人1人の意識改善を図る必要もあります。さらにPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)により、定期的に体制やマニュアルを改善していくこともリスクマネジメントを継続的かつ体系的に取り組む上で重要となります。こうしたリスクマネジメントの運用体系を整備し、取り組んでいくことでリスクコントロールをしていきましょう。

【まとめ】介護現場におけるリスクマネジメントは大切!

今後さらに高齢化が進む社会において、介護事故の防止は急務となることでしょう。
リスクマネジメントを継続的かつ体系的に運用していくためには、安全管理委員会の設置やインシデントレポートシステムの導入などの体制作りや環境作りも大切です。
しかし、一番重要となるのは日常業務の点検や見直しになるのではないでしょうか。

介護現場にはさまざまなリスクが潜んでいます。日々の業務の中にリスクはないか、スタッフ1人1人がリスクマネジメントの意識を持つ必要があります。
そして、リスクについて職員同士で気軽に話し合えるような風通しの良い組織風土作りがリスクマネジメントの要となります。介護現場におけるリスクマネジメントは、利用者の安全を守るとともに、そこで働く職員を守ることにもつながります。
介護現場におけるリスクを回避するためにも、この記事で学んだリスクマネジメントの方法をぜひ試してみてください。

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