介護予防の目的とは？高齢者の介護予防サービスや目的・役割について解説

介護予防とは、65歳以上の高齢者が要介護状態や寝たきりになることを防ぐことです。高齢化社会において、高齢者の健康寿命を延ばす取り組みとして介護予防が重要視されています。しかしながら、介護予防と一口に言っても、どのようなことをするのかイメージが湧きません。
本記事では、介護予防の目的や介護予防サービスの種類と役割について解説します。

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高齢者の「介護予防」とは？

高齢者の「介護予防」とは、高齢者が要介護状態や寝たきりになることを防ぐことを指します。また、要支援の認定を受けた高齢者や、軽度認知症の高齢者の症状の悪化・進行を遅らせることも「介護予防」に含まれます。ここでは、高齢者の介護予防の定義やフレイル予防との違いについてご紹介します。

介護予防の定義・概念

厚生労働省が定める介護予防マニュアルでは、介護予防に関して以下のように定義されています。「要介護状態の発生をできる限り防ぐ（遅らせる）こと、そして要介護状態に合ってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」介護予防は「要介護状態になることを防ぐ」ということだけではありません。「要介護状態になっても、症状や病気を悪化・進行させない」ということも介護予防の考えです。

「フレイル予防」との違い

介護予防に似た意味を持つ言葉に、「フレイル予防」というものがあります。フレイルとは虚弱という意味で、加齢や病気により心身状態が虚弱になる状態を指します。「介護予防」と「フレイル予防」のそれぞれの意味は以下の通りです。

・介護予防：要支援または要介護状態の高齢者の症状や病気の悪化・進行を防ぐ
・フレイル予防：健康な状態の中高年または高齢者が、加齢や病気による心身状態の虚弱を防ぐ

介護予防の目的

要支援の認定を受け、これから要介護状態になるリスクが高い高齢者や、要介護状態になった高齢者が病状の悪化を防ぐために目指すべき「介護予防」。
要支援または要介護状態の高齢者が「介護予防」を目指す目的は以下の通りです。

・高齢者が要支援または要介護状態になることを防ぐ
・高齢者の心身機能・運動機能の低下を防止する
・介護予防を通じて高齢者の社会参加を促し、QOL（生活の質）を向上させる

介護予防の目的は、高齢者の心身機能や健康状態の低下防止だけではありません。高齢者の健康状態や生活機能を維持・向上させることや、社会参加を促し、高齢者のQOLを高めることも介護予防の重要な目的です。

介護予防サービスの役割

介護保険制度では、要支援または要介護の認定を受けた高齢者が利用できる「介護予防サービス」を設けています。介護予防サービスでは、利用者の心身状態や生活状態、ニーズに応じた「介護予防計画」を立て、利用者の自立生活に向けた支援を行います。介護保険の介護予防給付で利用できる「介護予防サービス」の一例は以下の通りです。

・訪問型：介護予防訪問入浴介護・介護予防訪問看護・介護予防居宅療養管理指導など
・通所型：介護予防通所リハビリテーション・介護予防認知症対応型通所介護など
・入所／短期入所型：介護予防特定施設入居者生活介護・介護予防短期入所生活介護など

介護予防サービスには訪問型・通所型・入所／短期入所型の大きく分けて3つがあり、さらに福祉用具貸与・福祉用具販売などのサービスもあります。利用者本人の心身状態や健康状態に合わせた選択が可能です。

介護予防サービスの種類

高齢者が要介護状態になるのを防ぐ「介護予防サービス」には、通常の介護予防サービスと地域密着型介護予防サービスの2つがあります。ここでは、それぞれの具体的なサービス内容をご紹介します。

介護予防サービス

介護予防サービスとは、要支援認定を受けた高齢者が要介護になることを予防するために、介護保険の適用で受けられるサービスです。介護保険の利用で受けられる「介護予防サービス」は以下の通りです。

【介護予防訪問入浴介護】
訪問入浴介助員と看護師が要支援認定を受けた高齢者の自宅またはサ高住などの居室へ訪問し、簡易浴槽を用いて入浴介助を行います。

【介護予防訪問看護】
訪問看護師が要支援認定を受けた高齢者の自宅またはサ高住などの居室へ訪問し、バイタル測定や療養上の世話を行います。

【介護予防居宅療養管理指導】
医師または歯科医師、薬剤師が要支援認定を受けた高齢者の自宅またはサ高住などの居室へ訪問し、介護予防を目的とした健康管理・療養上の指導を行います。

【介護予防訪問リハビリテーション】
理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が要支援認定を受けた高齢者の自宅またはサ高住などの居室へ訪問し、介護予防を目的としたリハビリテーションを行います。

【介護予防通所リハビリテーション】
自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る要支援高齢者が、病院や介護老人保健施設などへの通所でリハビリテーションを受けます。理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が、介護予防を目的としたリハビリテーションを行います。

【介護予防短期入所生活介護】
自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る要支援高齢者を対象とした短期入所介護（ショートステイ）です。特別養護老人ホームに一定期間短期入所し、介護予防を目的とした身体介護や生活援助などの介護サービスを受けることができます。

【介護予防短期入所療養介護】
自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る要支援高齢者を対象とした短期入所介護（ショートステイ）です。介護老人保健施設に一定期間短期入所し、介護予防を目的とした介護や医療的ケアなどの介護療養サービスを受けることができます。

【介護予防特定施設入居者生活介護】
有料老人ホームや軽費老人ホームなどの特定施設に入居する要支援高齢者を対象とし、介護予防特定施設サービス計画に基づいた身体介護・生活援助などの介護予防サービスを提供します。

【介護予防福祉用具貸与】
自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る要支援高齢者を対象に、厚生労働省が定めた福祉用具を貸し出します。

【特定介護予防福祉用具販売】
自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る要支援高齢者を対象に、厚生労働省が定めた特定介護予防福祉用具を販売します。特定介護予防福祉用具とは、排泄や入浴などに用いられる「衛生上、貸与が難しい」と判断される福祉用具です。

地域密着型介護予防サービスの種類

地域密着型介護予防サービスとは、通常の介護予防サービスと同様に、介護保険の適用で要支援認定を受けた高齢者が利用できるサービスです。地域密着型介護予防サービスは、介護事業所が所在する地域と同じ地域に住む高齢者を対象としており、利用者の住み慣れた地域でサービスを提供しています。介護保険の利用で受けられる「地域密着型介護予防サービス」は以下の通りです。

【介護予防認知症対応型通所介護】
「要支援認定」と「認知症の診断」を受け、自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る高齢者を対象とした通所介護サービスです。デイサービス事業所にて、介護予防を目的とした身体介護・生活援助などの介護サービスを提供します。

【介護予防小規模多機能型居宅介護】
自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る要支援高齢者を対象とし、小規模で訪問・通い・宿泊のいずれかの介護サービスを行います。

【介護予防認知症対応型共同生活介護（グループホーム）】
「要支援2の認定」と「認知症の診断」を受け、自宅またはサ高住などの居室で在宅生活を送る高齢者が入居できるグループホームです。介護職員が介護予防を目的とした認知症ケア・生活援助を行いながら、入居者の共同生活をサポートします。

介護予防専門職が介護予防サービスを提供する重要性

介護予防サービスを提供するのは、介護福祉士を保有している介護職員が大半です。しかし、近年では高齢化により介護予防が注目され、介護予防に関する資格が増えています。介護予防に関する資格を取得し、介護予防専門職として介護予防サービスを提供する職種には、以下の3つがあります。

・介護予防指導士：筋力訓練指導・栄養管理・口腔ケア・転倒予防などに関する指導を行う
・介護予防運動指導員：介護予防の基礎知識や、高齢者の筋力向上トレーニングを熟知している
・介護予防健康アドバイザー：中高齢者の安全な運動や健康の維持をサポートする

介護予防サービスを提供する介護職員が介護予防の専門知識を身につけることで、利用者一人ひとりの心身状態に合わせた専門性の高い介護予防サービスが実現します。また、栄養管理や筋力向上トレーニングなどの指導もでき、サービスの質が向上します。

介護予防は要介護状態になってからでは遅い

介護予防は、「要支援の高齢者が要介護状態になること」や「要介護状態になった高齢者の病状の悪化」を防ぐことが目的です。しかし、要介護状態や寝たきりになってからでは、介護予防が間に合わない場合もあります。介護予防は、要介護状態や寝たきりになってからではなく、要支援になる前や、要支援の認定を受けた時点から始めることが大切です。

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