そもそもワークライフバランスとは、仕事とプライベートを最適な状態で両立させることを言います。日勤や早出、遅出などの不規則勤務に加え、夜勤に入ることが求められる介護職は、ワークライフバランスを実現させにくいことが悩みの種です。本記事では、不規則勤務の介護職がワークライフバランスを実現させるコツについて解説します。
そもそもワークライフバランスとは?
ワークライフバランスとは、社会人として働く人が仕事とプライベートの両立をバランス良く保ち、充実させることを言います。ワークライフバランスを充実させるには、ただ単に勤務時間を減らしたり、残業や休日出勤などの時間外勤務を減らしたりするだけでは不十分です。勤務時間を減らすことで給与額が減り、時間外勤務を減らすことで残業手当などの時間外手当がもらえなくなります。ワークライフバランスの本質は、働き手一人ひとりのライフステージに合わせた働き方を実現することです。
例えば、
・育児や親の介護に追われていても、在宅や短時間で働ける仕事を見つける
・これまで時間外労働の長さに悩んできた人が、残業のない仕事を見つける
・夜勤や早朝出勤などで寝不足だった人が、平日昼間のみの仕事を見つける など
その人、その人の悩みや希望に応じた仕事を見つけて、働くことがワークライフバランスで最も重要なことです。自分自身に合った仕事を見つけることで、ストレスが減り、心身ともに健康的な生活を送れるようになります。
介護職の勤務時間・勤務日数の実態
介護業界は、年々進行する少子高齢化の影響により、要介護高齢者の急増と介護人材の不足問題を抱えています。そのため、ワークライフバランスが充実しづらいという悩みを抱える介護職が少なくありません。ここからは、介護職の勤務時間・勤務日数などの労働条件の実態についてご紹介します。
有給休暇を消化できない
有給休暇とは、労働者がゆとりを持って働くために自由に取得することができる休暇のことです。有給休暇日数は入社後半年を過ぎた日に10日、その後、毎年20日ずつ付与されます。毎年最低5日の有給休暇の取得義務があるため、有給休暇の取得を促す介護施設・介護事業所が増えてきています。しかしながら、「公益社団法人 介護労働安定センター」が行った調査では、介護職の有給休暇の平均取得日数は7. 3日と報告されました。有給休暇の取得日数は、半数以上の介護職が「10日未満」です。介護現場の人手不足により、有給休暇の取得がしづらいことが原因であると考えられています。
残業が当たり前になっている
「全国労働組合総連合」が行った調査では、介護職の平均残業時間は月8.2時間、正社員に限定すると月10.2時間でした。さらには、介護職の4人に1人が「時間外手当」の支給されないサービス残業をしているような状態です。残業をせずに定時で帰宅しようとすると、先輩から「なんで帰るの?たまには残業しなさいよ!」と不当に怒られたというケースもあります。求人には記載していませんが、実際は残業が常習化している介護施設・介護事業所が多いようです。
人手不足で急遽出勤になることがある
今日出勤予定だった介護職が熱を出して欠勤になった、介護職の子供さんが熱を出して結婚になった。こういった体調不良による欠勤はよくあることです。また、産休や育休により、長期間休むことになったというケースも。そのような人手不足をカバーするために、本来休みの日でも「出て来てほしい」と上司から頼まれることが多くあります。そのため、9連勤や12連勤をこなす介護職も多く、労基に違反しているケースも多いです。
介護職がワークライフバランスを充実させるためのコツ
深刻な人手不足による多忙な介護現場で活躍している介護職が、ワークライフバランスを充実させるにはどうすればいいでしょうか。各介護施設・介護事業所のみならず、行政や労働組合なども介護職の働き方についてさまざまな案を掲げています。ここからは、介護職がワークライフバランスを充実させるためのコツを3つご紹介します。
休暇制度の推進を行う
まずは管理職や上司を中心に、有給休暇や産前産後休暇、育児休業、介護休業などの休暇制度を活用するよう、従業員に声掛けを行うことが重要です。また、介護職一人ひとりが、各自の忙しさや大変さをアピールするのではなく、「お互い様」と思うことで、休暇がとりやすい職場環境が実現します。休暇制度がうまく活用できることによって介護職一人ひとりの疲れやストレスが解消でき、より働きやすい雰囲気の職場になることが想定できます。
業務内容の見直し・改善を行う
介護職のワークライフバランスがうまく実現しないことの原因として考えられるのは、介護職1人当たりが負担する業務量の多さです。少子高齢化により、要介護高齢者が急増している現代社会。介護人材の不足により、介護職1人当たりが負担する業務量が日に日に増えていっています。特に、サービス残業や休日出勤が当たり前になっている介護施設・介護事業所は、今すぐに業務内容の見直しや改善をする必要があります。業務内容の見直し・改善を行う際は以下のポイントに着目しましょう。
・介護職1人が負担する業務内容とそれぞれの所要時間
・各介護職・多職種の役割分担や連携状態
・介護業務に使用している介護用リフトや記録作成ソフトなどのツール
介護業界では、効率重視よりも利用者様お一人おひとりに丁寧に対応することが良いとされる傾向にあります。しかし、介護職も利用者様と同じ人間です。無駄な業務は省き、休憩したり、プライベートを充実させたりする権利があります。そのため、日頃の業務内容やスタッフ同士の連携状態、普段使用しているツールなど、さまざまな視点から見直し・改善を行うことで、ワークライフバランスの充実が実現します。
DXの導入を検討する
DXとは、デジタル機器や介護ソフトを導入し、記録入力業務の効率化を図ることです。利用者様に提供する介護サービスよりも時間がかかりがちなのが、日頃の介護記録作成や、日報の作成です。介護記録がまだ作成できていないからという理由で、残業する介護職も多い傾向にあります。他にも、ベッドセンサーやインカム、見守りカメラなどを導入し、利用者様の見守りを行うこともオススメです。少ない人員でも効率的に業務をこなすためには、DXの導入を検討することが大切です。
ワークライフバランスが実現できないと悩んだ時の対処法
ワークライフバランスが実現できないと悩む介護職は、少なくありません。
もし、自分自身が適切なワークライフバランスが実現できていないと悩んだ時は、
以下の対処法をとることをオススメします。
・直属の上司に悩みを相談する
・業務の見直しや改善案の提案を積極的に行う
・上司に話を聞いてもらえない場合は、管理職や施設長に相談する
これらの対処法をとっても、改善しないケースも多くあります。そのため、入社前からワークライフバランスが実現できそうな職場選びをしておくことが非常に重要です。特に、「産休・育休制度」「残業なし/残業少なめ」「託児所・育児支援あり」「休日数多め」などと記載されている求人を選ぶようにしましょう。介護職がワークライフバランスを実現させるためには、入社前からの見極めが重要になるのです。
悩んだら転職することも大切
上司や管理職、施設長に相談したり、業務改善の提案をしたりしたにもかかわらず、状況が改善されないという場合は、転職を考えることもオススメです。転職活動する際は、転職先の勤務時間や勤務日数、人員配置数などの細かい情報をチェックしておくことが重要です。また、施設見学や採用面接の際に、ワークライフバランスが実現しやすいかどうか、担当者に直接質問するという手もあるでしょう。まずは、理想の勤務時間や勤務日数、休日数などをメモに書き出し、希望条件に沿った求人を探すようにします。どうしても1人で転職活動を進めるのが不安という方は、介護業界専門の転職エージェントを活用することがオススメです。
まとめ ワークライフバランスが実現できる職場を選ぼう
少子高齢化により、深刻かつ慢性的な人手不足問題を抱えている介護業界では、介護職一人ひとりの業務負担量が多い傾向にあります。また、残業や休日出勤が多く、休みが少ないという不満を抱えている介護職の方も少なくありません。ワークライフバランスを実現させることで、疲れやストレスを軽減し、業務効率をアップさせることも可能です。是非、職場全体で従業員のワークライフバランスについて話し合ってみてはいかがでしょうか。
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