介護職は入浴介助や移乗介助、体位交換など、中腰で利用者のケアを行う場面が多いです。そのため、介護の仕事は腰痛やぎっくり腰の発症率が非常に高いです。介護の仕事の「職業病」と呼ばれているくらい、発症率が高い介護職の腰痛。この記事では、介護現場で使える腰痛の予防法や改善法をご紹介します。
なぜ腰痛が「介護職の職業病」と呼ばれるのか
厚生労働省が令和3年に行った「業務上疾病発生状況等調査」では、介護職が仕事中の腰痛で4日以上休業したという報告が2000件以上ありました。
介護職の腰痛を軽減するために、国は以下のような対策を推進しています。
・「介護ロボットやリフトなどの介護補助器具の導入に対する助成」
・「腰痛予防の講習の実施や腰痛を発症した介護職員に対する支援」
しかし、利用者の移乗介助や体位交換などを行い、腰痛に悩む介護職は増加傾向です。もはや、腰痛は「介護職の職業病」と言っても過言ではありません。腰痛で介護の仕事を退職することを避けるためにも、97%の介護職が腰痛ベルトや腰痛予防体操などで腰痛対策を行っています。
介護職が腰痛を引き起こす要因
介護職が腰痛を引き起こす原因は複数あり、その複数の原因が関与し合っている場合もあります。介護職が腰痛を引き起こす原因について、解説します。
腰に負担となる動作・業務が多い
介護職は「腰を曲げたまま重いもの(人)を持ち上げる」という動作を多く行います。利用者のおむつ交換やトイレ介助を前かがみになって行ったり、ベッドと車椅子間の移乗介助で利用者の身体を持ち上げたり。こういった動作を長時間行うことで、腰に負担がかかってしまいます。
介護職の腰痛予防に関する知識不足
介護職に腰痛予防の知識がないことで、「無理な体勢での動作」を続けてしまいます。利用者の移乗介助を行う際に力任せに持ち上げたり、利用者を中腰で抱えたり。こういった動作は介護職の負担になるだけでなく、利用者の転倒・転落に繋がる恐れがあります。安全に介護業務を行うためにも、介護職は正しい腰痛予防の知識を身につけることが大切です。
安全に介護をするための環境が整っていない
介護現場の環境が整っていないと、「同じ姿勢を長時間続ける」ことになりかねません。
・タンスやクローゼットなどの大型家具により、居室が狭い
・トイレが狭く、介助者が入るほどのスペースがない
・浴室の床が濡れており、不安定な状況で介助しなければならない
介護現場の環境の不整備が原因で、介護職が腰痛を引き起こすこともあります。介護職が負担を感じた場合、施設の運営者に気軽に相談できる環境を整えること。また、介護職から相談を受けた運営者は適切な対応を検討することが求められます。
腰痛を起こしてしまった場合の「悪化させない方法」
もし介護職が腰痛を起こしてしまった場合、腰痛を悪化させないことが重要になります。忙しない介護業務の中で、腰痛を悪化させないためにできることをご紹介します。
正しい腰痛対策の知識を身につける
正しい腰痛対策の知識を身につけ、仕事中も腰を労わるようにしましょう。
・無理な姿勢や力任せの介助を行わず、ボディメカニクスを活用する
・利用者の身体を引き寄せる、重心を低くするなど、腰を労わる姿勢を保つ
・利用者に自分で立ち上がってもらうことで、腰への負担を減らす
・居室内を整理したり、ベッドの高さを調節したりして介護しやすい環境を整える
正しい姿勢や環境整備を意識し、腰への負担を減らしましょう。
ストレッチや体操をする
腰痛は同じ姿勢を長時間とり続けることで生じやすくなります。そのため、仕事の合間や休憩時間に、腰を伸ばすストレッチや体操をしましょう。身体を伸ばすことで、腰への負担を軽減するだけでなく、疲労回復やリフレッシュ効果も期待できます。また、背中や腰の凝り固まった筋肉がほぐれ、血流が良くなるというメリットもあります。
腰痛対策グッズの活用で腰を保護する
腰痛を悪化させないためには、腰痛対策グッズを活用することがオススメです。
・腰椎や骨盤をサポートするサポーターやコルセットを使用する
・負担軽減のため、リフトやスライディングボード、スライディングシートなどを活用する
・入浴剤やバスソルトを入れて、お風呂でリラックスする
腰痛対策グッズには、サポーターやリフト、スライディングボードなど、介護現場で活用できるものから、お風呂で楽しむものなど様々です。負担軽減やリラックス効果のあるグッズを活用し、腰痛を悪化させないようにしましょう。
腰痛予防に最適な「ボディメカニクス」
介護職は利用者を抱える・持ち上げるという動作が多く、腰痛を引き起こすリスクが高いです。そのため、腰痛を引き起こす前から、しっかり予防することが重要になります。
腰痛予防で重要なのは、「正しい姿勢で介助を行うこと」です。
「腰を曲げたまま重いもの(人)を持ち上げる」「無理な体勢で介助を行う」「同じ姿勢を長時間続ける」など、腰痛を起こす間違った姿勢・体勢は避けましょう。
また、力任せで介助を行うことで、腰に余計な負担がかかることになります。正しい姿勢や介護技術で、腰への負担を軽減しながら介護業務を行いましょう。
腰痛予防にオススメの「ボディメカニクス」
ボディメカニクスとは、人間の骨や筋肉、関節の「力学的関係」を介護場面で活用したものです。利用者の身体を最小限の力で動かすことが可能になり、介護職と利用者双方の負担が軽減できます。ボディメカニクスには以下の8つの基本原理があり、それに基づいて移乗介助を行うことで、腰痛を予防することができます。
利用者の身体を小さくまとめる | ・同じ重さのものでも面積が小さいほど力が分散せず、軽く感じる ・腕を胸の前で組んだり、足を立てたりして利用者の身体をコンパクトにすることで移乗しやすくなる |
利用者との重心を近づける | ・物を運ぶ際、自分の身体に近づけて持つと身体の重心が安定する ・移乗介助の際、利用者との距離を近づけて持ち上げると最小限の力で移乗できる |
支持基底面積を広くする | ・支持基底面積とは、重心を安定させるために足を開いた時の面積のこと ・支持基底面積が広いほど身体が安定し、ふらつきにくくなる ・移乗の際は左右前後に足を広げ、支持基底面積を広げる |
重心を低くする | ・重心が高いと腰に強く負担がかかってしまう ・移乗介助の際は腰を落として重心を低くした姿勢をとると、腰痛が予防できる |
大きな筋群を使う | ・手首や腕の部分的な筋肉だけでなく、背中や足などの全身の筋肉を使う ・背中や太ももなどの大きい筋肉を使うことで、強い力が発揮できる |
水平に移動させる | ・無理に利用者を持ち上げると腰に負担がかかる ・利用者の身体を持ち上げず、水平にスライドするように移乗する |
身体をひねらない | ・移乗時に腰から上半身をねじると、姿勢が不安定になる ・移乗時は、肩と腰を平行のまま動かせるよう、車椅子の位置や利用者の足の向きに注意する |
テコの原理を使う | ・小さな力で移乗するために、テコの原理を活用する ・利用者の肘や膝を支点にすると、利用者を寝た状態から起こしたり、車椅子へ移したりする動作がスムーズになる |
腰痛で悩む介護職にオススメの職場・職種
「腰痛がなかなか改善しない」と悩んでいる介護職は、部署異動や転職で勤務する施設形態を変えてみることもオススメです。また、キャリアアップとして別の職種に転身することもオススメです。腰痛に悩む介護職にオススメの職場・職種をご紹介します。
腰痛に悩む介護職にオススメの職場
・デイサービス/デイケア
・訪問介護
・グループホーム
デイサービス/デイケアでは、介護施設に比べて自立度が高い利用者が多いため、少ない負担で介護業務を行うことができます。また、訪問介護やグループホームでは掃除や洗濯、簡単な調理などの家事支援がメインなので、介護施設に比べて身体介護が少ないです。
腰痛に悩む介護職にオススメの職種
・生活相談員
・介護事務員
・生活支援専門員(ケアマネジャー)
生活相談員や介護事務員は資格不問で勤めることができ、利用者の相談業務や事務仕事がメインです。生活支援専門員(ケアマネジャー)は資格が必要ですが、介護職にオススメのキャリアアップです。いずれもデスクワークが中心のため、最低限の負担で働くことができます。
まとめ 腰痛にならないためには、正しい介護技術を身につけるべき
介護の仕事は利用者を持ち上げる・抱えるという動作が多く、腰への負担が大きいです。そのため、腰痛は介護職の職業病とも呼ばれています。介護職が腰痛を予防するためには、まず腰痛の原因や腰痛を起こさない方法を知ることが大切です。正しい知識がないまま、力任せに介護業務を行うことは極めて危険です。正しい介護技術を身につけることや、ボディメカニクス・福祉用具の活用で腰痛を予防しましょう。
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