介護の仕事をするうえで、更衣介助は避けて通れません。しかし、新人の頃などは、更衣介助が大きな壁になるものです。「更衣介助に自信がない」「どこに注意すればいいのか、よくわからない」そのような悩みを抱えている方に向けて、更衣介助の注意点やコツなどを解説します。
本記事を参考に更衣介助のコツをつかみ、介護の力を付けてください。
更衣介助とは、1人で着替えができない人の介助を行うこと
更衣介助とは、1人で着替えができない方への介助を指します。高齢になると体力が落ちて、1人で着替えるのも難しくなります。さらに、病気などで片麻痺がある方や、拘縮がある方などはなおさらでしょう。また、寝たきりや重度の認知症の方は、そもそも着替えがまったくできません。普段何気なくやっている更衣(着替え)ですが、皮膚を清潔に保ち褥そうを予防するなど、大切な行為です。利用者さんにとっても、今まで通り毎日の着替えは、QOLの維持や向上にもつながります。
介護で更衣するさいの注意点5つ
更衣介助は簡単に見えますが、意外に難しいと感じるでしょう。特に新人の介護職員には、オムツ交換と並んで一つの壁となるかもしれません。人間は、一人ひとり特徴が違います。そのため介助方法も、その人に合ったものを選ばなければなりません。特に注意したいポイントは以下のものがあります。非常に大切なので、一つひとつしっかり確認してください。
・室温に気を配ろう
・転倒や転落は絶対防ぐ
・プライバシーを配慮しよう
・皮膚の観察を忘れずに
・介助はできない所だけ
室温に気を配ろう
更衣のさいは肌が露出して、体温が下がります。室内の温度調整に、気を使いましょう。およそ23℃~25℃前後が熱くもなく寒くもないため、更衣に最適な室温です介護職員はいろいろと動き回って、体温が上がっている場合も多いと思います。自分の体感ではなく、室温を基準にするといいでしょう。冬はもちろん、夏でもクーラーが利きすぎていないか気にかけましょう。
転倒や転落は絶対防ぐ
更衣介助時は常に、利用者さんが転倒しないかを考えながら行いましょう。着替えは、イスなどに腰かけてもらって行います。しかし座位の保持が不安定な方は、背もたれがないところ(ベッドサイドなど)で端坐位の状況だと、後ろに倒れる可能性があります。また、拘縮が強い方などは、前方に滑り落ちる危険も考えられます。更衣介助の最中は、介護者も着替えに気を取られて利用者さんへの意識がうすくなりがちです。一人で介助するのが難しいと感じたら、無理せず介護者二人で対応しましょう。
プライバシーを配慮しよう
プライバシーへの配慮は、決して忘れないようにしてください。介護の仕事は人手不足の影響もあって、業務に追われてしまいがちです。そのような状況では、目の前の利用者さんよりも、次の業務に間に合うかを気にしてしまうでしょう。しかし、そのような時でも、プライバシーの配慮を忘れないでください。いくつになっても、自分の裸は見られたくないものです。同性の方が介助するように心がけてください。また、ブランケットをかけるなどの心配りも、忘れたくないものです。利用者さんの人権は介護者である自分がまもると、しっかり心に留めましょう。
皮膚の観察を忘れずに
高齢になると、スキントラブルが多くなります。特にオムツを常時着用している場合は、常に臀部が湿潤しているため、なおさらでしょう。しっかりと皮膚を観察できるのは、更衣介助のときです。ほんの少しの変化(少し赤くなったなど)も見逃さず、しっかりと医療職につなげましょう。
観察のさいは、以下のポイントをおさえてチェックしてください。
・手足や顔がカサついていないか
・四股に内出血がないか
・皮膚がはがれていないか
・臀部や背中に褥そうができていないか
・皮膚が発赤していないか
介助はできない所だけ
更衣介助は、利用者さんの自力を活かしながら行いましょう。できることは自分で行ってもらい、介助は最小限度にとどめます。しかしこれも程度しだいです。利用者さんは疲れているのに「自分でできるでしょ」と、頑張らせるのも酷なものがあります。利用者さんの気分や疲労度、やる気などを判断しましょう。いい雰囲気を作って、利用者さん自ら進んで行動するのが理想です。
更衣するさいの3つのコツで介護がラクに
人の身体は一人ひとりちがいます。特に高齢者になると、拘縮や麻痺、筋力の低下などがあるでしょう。そのため、一人ひとりに合った介助方法が求められますそれぞれに合った介助と言っても、基本は同じです。応用の前にしっかり基本を身につけてください。
声かけ
声かけは介護の基本です。「少し腕をあげます」「袖を通しましょう」など、一つひとつ介助のたびに声をかけましょう。高齢者の中には、視力が弱い方や認知症で状況がよくわからない方もいます。そうではなくても、何も言わずに介助を始めるのは失礼です。中には、拘縮の方で「手を開いてください」と声をかければ、開ける方もいます。健常者のようにとはいきませんが、少しでも開けば介護も楽になるでしょう。特に身体介助を行う際には、かならず声をかけてください。
衣類の選択
利用者さんの服は、付けやすく着心地のよいものを選んでください。通気性に優れて肌触りがよい物、ゆったりしている物がいいでしょう。拘縮がある方への着脱のしやすさを考えると、上衣は前開きで肩幅が広い物、ズボンはウエストや裾がゴムで絞るタイプがいいでしょう。また、どちらも伸縮性のあるものがおすすめです。介護する側の視点では、以上のような服が介助しやすくなります。しかし、利用者さんの意見もしっかり聞くのも大切です。本人の好みに合わせつつ、介助しやすい服を選びましょう。
脱健着患(だっけんちゃっかん)
更衣介助のさいは、脱健着患を意識しましょう。脱健着患とは、文字通り「健側(問題のない所)から服を脱ぎ、患側(麻痺や拘縮がある所)から服を着ける」という着脱衣の手順を表しています。更衣介助をするうえで、脱健着患は欠かせません。片麻痺や拘縮がある方の更衣介助の場合は、なおさらです。特に拘縮の方を、力ずくで衣服を付けさせると苦痛を与えてしまい、場合によっては皮膚の表皮剥離(ひょうひはくり:皮膚がはがれてしまうこと)や骨折してしまいます。更衣中の骨折は、意外と多く発生しています。特に寝たきりの方は、意思表示ができません。また、介助した方も更衣で骨折するとは思っていない場合も多く、発見が翌日以降になるケースもあります。更衣介助を効率よく行うためだけでなく事故防止の観点からも、脱健着患を強く意識しましょう。
寝たきりの方の更衣介助
寝たきりのかたへの、具体的な衣服介助の手順を解説します。今回は、寝たきりで片麻痺の利用者を想定し、衣服は前開きを使用します。
➀まず、必要な物品(着替えやタオルなど)を準備しましょう。次に、利用者さんに「これから、着替えを始める」ことを伝え、了承を得ます。
➁利用者さんに横を向いてもらい、片方の腕(健側)から衣服の袖を抜きます。次に反対に向いてもらい、もう片方のそでを抜きましょう。最後に首から衣服を脱いでください。
➂脱衣が済んだら、着衣に移ります。まずは袖を扇子折りにして、袖口から介護者の手を通しましょう。その手で両者さんの手を握手をする形でにぎり、反対の手で袖を通していきます(患側から行う)
➃片方の袖を通したら、利用者さんに横を向いてもらいます。服と背骨のラインを合わせ、衣服の見ごろ(胴の部分)を利用者さんの身体の下へ送り込んでください。
➄見ごろを送り込んだら反対側を向いてもらい、先ほど身体の下へ送り込んだ身ごろを引き出します。
➅残りの袖も、先ほどと同様に扇子折りにして握手の形をつくり、通していきます。
➆両袖を通し終えたら、仰向けになってもらいましょう。両脇の下を斜め方向に引っ張ると、背中によったしわが伸びます。
➇全体的によれやしわがないかを確認し、利用者さんにも丁度いいか尋ねましょう。利用者さんが満足であれば、更衣介助は終了です。
更衣介助は介護の基本【まとめ】
更衣介助は介護の基本です。簡単そうに見えますが、人に衣服を着せるのは意外に難しいものです。身体に麻痺があったり、拘縮があったりしたら、その難しさは倍増します。
まずは介脱健着患などの基本やコツを身につけて、安全に正確に行えるのを目指しましょう。更衣は、人体の動きついて状態の観察、声かけやプライバシーへの配慮などが求められます。大げさかもしれませんが、総合的な介護力が必要といえます。介護の力を付けるためにも、更衣介助の基本をしっかり身につけましょう。
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