介護現場でハンドケアや音楽療法を用いたメンタルケア方法を学ぼう！

介護施設で利用者と関わる上で、メンタルケアを理解し実施するのは大切なことです。精神面はあらゆる部分に大きく影響するため、ケアを行うことで利用者の生活の質を上げることが可能です。
またメンタルケアはセラピーなどを用いてのアプローチも効果的といわれています。そこで、この記事では、メンタルケアにも有効なハンドケアや音楽療法の実践方法や注意点などを解説します。ハンドケアや音楽療法を理解し、より効果的にさまざまな方面からメンタルケアを実施しましょう。

介護とメンタルケア
1. 高齢者へのメンタルケアで必要なこと
2. 介護におけるメンタルケアの効果
介護とハンドケア
介護と音楽療法
まとめ

介護とメンタルケア

利用者に介護ケアを行う上で、身体的な介護や生活援助はもちろん大切ですが、それらと同じくらい重要なのは「メンタルケア」です。どの介護サービスにおいても利用者それぞれに違った介護ニーズがあり、それに寄り添うケアをより丁寧に行うためには「メンタルケア」は欠かせません。そこで、ここからは高齢者へのメンタルケアで必要なことやメンタルケアの効果を解説していきます。

高齢者へのメンタルケアで必要なこと

高齢者のメンタルケア方法は悩みごとや困りごとへの傾聴だけではありません。さまざまなセラピーを用いて効果的に精神面にアプローチすることが可能です。
メンタルケアに効果的なセラピーや活動は、以下になります。
・レクリエーション
・交流会
・マッサージ
・音楽療法
・回想法
利用者同士の交流を促すレクリエーションやゆったりとした音楽療法・マッサージのようなリラクゼーションを通して、心身の機能向上を目指します。介護現場のメンタルケアにおいてハンドケアや音楽療法のようなセラピーは欠かせません。その詳細を下記で説明していきます。

介護におけるメンタルケアの効果

介護におけるメンタルケアの効果は大きいです。その中でも主な効果を以下にまとめました。
・心身機能の維持・向上
・認知症症状の緩和
・生活のメリハリ
・食欲の増加
・生きがいづくり
生活の質向上において、精神面の安定は欠かせません。心は日常生活の在り方を大きく左右する重要なものです。メンタルにアプローチするケアを実施することで、心身の機能や食欲まで向上させることも期待できます。

介護とハンドケア

昨今、リラクゼーションブームで話題となったハンドケア。最近では、癒し効果の高いハンドケアを医療・介護現場でも取り入れることが多くあります。そこでここからは、ハンドケアについての詳細情報を紹介していきます。

ハンドケアとは

ハンドケアの直接的な効果は、血行の促進です。血液の巡りが良くなることで冷え性や肩こりの改善が期待できます。また、人の手と手が触れ合うことでの癒し効果も。マッサージを通じてコミュニケーションが取れる点もハンドケアならではのメリットであるといえます。

実践方法

ハンドケアの主な実践方法は以下です。

1.利用者の両手肘から手先までハーブオイルやマッサージクリームを塗る
マッサージで肌に負担がかからないようオイルやクリームを優しく塗布します。
オイルはほんのり良い香りのするものを選んでもOKです。

2.ゆっくりと滑らせるように肘から手先までをマッサージしていく
オイルを塗ったら、両肘から手先までゆっくりとマッサージしていきます。
手先から肘にかけて順番にマッサージすると、より血行を促進することができます。

3.オイルを使用する場合、べたつくようなら最後軽くふき取る
オイルが残る感じが気になるようなら最後に少しふき取るようにしましょう。

マッサージを実施する前に手浴などを行うのもおすすめです。血行がよくなり、更に効果的なハンドケアを行うことができます。

気を付けるポイント

一般的なマッサージのように強く押したり揉んだりするのは危険です。高齢者の肌や骨は、通常よりもデリケートであるため、あまり力強くマッサージしてしまうと骨折や内出血の原因になってしまう可能性があります。マッサージの際は、優しくなでるように行うことを意識しましょう。

介護と音楽療法

介護ケアによく用いられるようになったセラピーのひとつとして音楽療法があります。音楽は、人の生理的・心理的・社会的・認知的な状態に作用する効果が期待できます。五感の中の一部である聴覚を刺激することで、利用者のメンタルケアに繋げようと考えた取り組みです。以下では、音楽療法の効果や実践方法を解説していきます。

音楽療法とは

音楽療法は、音楽を通して利用者の自己表現の場をつくるアプローチ方法のことです。自己表現ができることで、心身におけるさまざまな効果を期待することができます。
音楽療法は細かくわけて、
・受動的音楽療法
・能動的音楽療法
・個人的音楽療法
・集団音楽療法
・リトミック
の5種類があります。
ニーズに合わせて使い分けながら、より効果的に音楽療法を実践するのが大切です。音楽の力を最大限に活かし、利用者を多方面から支援できることを目指します。

音楽療法の効果

音楽療法で期待できる主な効果は以下です。
・精神的な安定
・痛みの軽減
・活動性の促進
・コミュニケーションのきっかけ
・脳の活性化
・リラックス
・嚥下機能の維持・向上
音楽療法は、認知症や精神疾患のある利用者にも有効です。音楽を通して聴覚を刺激し、心が癒されたり、脳が活性化されたりします。
また、脳を刺激することで認知症予防や生活のメリハリのきっかけにもなります。その他、口を動かすことで、嚥下機能にアプローチすることも可能。音楽療法を介護施設で実践することで、多くの効果が期待できます。

音楽療法士とは

音楽療法士の正式名称は「日本音楽法学会認定音楽療法士」です。音楽療法士資格は民間のものであり、受験資格の条件に満たした者が筆記試験・面接に合格したら与えられる資格です。音楽療法士は医療・福祉だけでなく教育現場などでも需要が高い職種です。音楽療法をより効果的に行うために、高度な音楽の知識や技術を習得しています。また、老若男女問わず乳幼児から高齢者までがセラピーの対象者となるため、幅広い年代の時代背景や心理学を理解しておく必要があります。

実践方法

音楽療法を実践する際の決まりは特にありませんが、取り組みやすい流れパターンは存在します。介護施設やデイサービスでの音楽療法は「集団音楽療法」である場合が多いです。介護現場で音楽療法を実践する際の主な流れを解説していきます
。
1.季節の話題を含めた挨拶や導入
まずは「音楽療法」を行うと認識してもらうための挨拶や説明、季節の話などを軽く行います。
例「皆さん、こんにちは。今日は〇月〇日です。もうすっかり夜は肌寒く、秋の雰囲気が出てきましたね。近くの△△神社では紅葉がそろそろ紅葉が始まるようですが、行ったことのある方いますか？今日はそんな秋を感じる懐かしい歌を皆さんと一緒に歌いたいと思っています」
挨拶と説明、そしてさりげなくこれから歌う曲の説明を行います。

2.リクエスト曲を聞いたり演奏したりする時間
ある程度歌う曲を決めていても、利用者に希望曲やリクエスト曲を聞くのがベスト。
利用者が自ら参加している雰囲気を出すためにもリクエスト曲を聞くことは効果的です。
演奏するリクエスト曲は、2・3曲程度としましょう。
リクエストされた曲をピアノなどで演奏し「知っている人は口ずさめる」雰囲気づくりをします。

3.あらかじめ決めていた曲を演奏
数曲リクエストに応えたら、次はあらかじめ決めておいた曲を流しましょう。選択曲は、参加利用者が誰でも知っているような歌にするのがベストです。
・季節の歌
・軍歌
・昭和初期の歌謡曲
・60～80歳くらいの方が知っているような人気だった曲

などを選択すると良いでしょう。

気を付けるポイント

音楽療法実施の際に気をつけるべきポイントは以下です。
・利用者のペースに合わせる
・利用者の様子を確認しながら行う
・スタッフも一緒になって笑顔で楽しむ
・利用者が入り込めるような曲を選ぶ
「スタッフが先走り利用者が置いてきぼり」ということがないよう、利用者のペースに合わせながら行うのが大切です。
また、途中に体調不良などになってしまった際、すぐ対応できるように利用者の様子をよく観察しながら行うようにしましょう。楽しい雰囲気を演出するため、利用者の好みそうな曲を選択し、スタッフも一緒になって楽しめるとベスト。より効果的に音楽療法を実施することができます。