介護の仕事内容

歩行能力の低下を防ぐ!介護士ができる生活リハビリテーションの内容を解説

「高齢者が歩けなくなる原因ってどんなこと?」「介護士がご利用者様の歩行能力低下を防ぐ方法はあるの?」このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

介護士がご利用者様の歩行能力の低下を防ぐ方法の1つに「生活リハビリテーション」があります。日常生活を送るうえで欠かせない動作を、なるべくご利用者様に行ってもらうといった考え方です。

本記事では、生活リハビリテーションの内容と歩行能力が低下する原因を中心に解説します。

介護士でも行える生活リハビリテーションを理解し、業務に役立ててみてはいかがでしょうか。

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歩行能力が低下する3つの原因

日常生活を送るうえで歩行中に転倒の危険性があったり介助が必要だったりする場合は、歩行能力が低下していると考えられます。

歩行能力が低下する原因は以下の3つです。

・筋肉量の低下
・視力や聴力の低下
・認知機能の低下

それぞれ解説します。

筋肉量の低下

歩行には下肢の筋肉を使いますが、必要な筋肉が少ないと歩行能力低下のリスクが高まります。

歩行に使われる筋肉は以下のような種類があります。

大殿筋(だいでんきん)

臀部の後ろ側の筋肉です。足を後ろに上げるために使われます。

中殿筋(ちゅうでんきん)

臀部の横側の筋肉です。足を外に広げるために使われます。中殿筋の筋肉量が少ないと左右のバランスが悪くなります。

大腿四頭筋(だいたいしとうきん)

太ももの前側の筋肉です。膝を伸ばすために使われます。大腿四頭筋が弱いと歩行中に膝折れが起こってしまいます。

ハムストリングス

太ももの後ろ側の筋肉です。膝を曲げるために使われます。

下腿三頭筋(かたいさんとうきん)

ふくらはぎにあたる部分の筋肉です。足を蹴りだして前に進むために使われます。

前脛骨筋(ぜんけいこつきん)

膝下から脛までの前側についている筋肉です。つま先を上に上げるために使われます。前脛骨筋が弱いと、つま先が地面にひっかかりやすくなります。

筋肉量が低下する原因の1つに「活動量の低下」があります。高齢になると病気やケガが原因となって、あまり動かない生活を送りがちになるケースもあるでしょう。筋肉を使わないと萎縮が進んでしまうため、筋肉量が低下してしまうのです。

視力や聴力の低下

加齢によって視力や聴力が低下すると、歩行能力が低下する原因となります。視力は歩くのに障害になる物を見分けたり、自分の身体の位置を把握したりする役割があります。また、周囲の状況を把握するためには聴力も大切です。

視力や聴力が低下すると周囲の情報が得づらくなり、歩行能力にも悪影響を及ぼすでしょう。

認知機能の低下

認知機能が低下すると周囲の状況を正しく認識できなくなり、歩行能力が低下する原因となります。認知機能の低下とは理解力や判断力、記憶力などの能力が低下した状態を指します。

認知機能は以下の5つです。

・記憶障害
・失語
・失行
・失認
・遂行機能障害

例えば失認がある場合、歩行中に障害物があっても認識できない可能性があります。すると障害物を避けられずにつまずいてしまい、転倒してしまうケースもあるでしょう。

歩行能力の低下を防ぐために介護士ができることはあるのでしょうか?続いて、介護士が行えるリハビリテーションについて解説します。

介護士が行える生活リハビリテーション

理学療法士などのリハビリの専門職と、介護士が行うリハビリテーションには違いがあります。

理学療法士は身体機能の維持・向上を目的とし、医師の指示に従って運動療法や物理療法を用いてリハビリを行います。具体的には起き上がる・立つ・歩くなどの日常生活に欠かせない動作のリハビリです。

一方で、介護士がご利用者様に対して行えるのは「生活リハビリテーション」です。

生活リハビリテーションはリハビリとして特別な時間を設けるのではなく、日常生活の中で必要な動作(食事・排泄・入浴・着替えなど)を出来る限りご利用者様に行ってもらうといった考え方です。

生活リハビリテーションを行う際は以下のポイントを観察します。

・実際に自分の力でできている部分はどこか
・自分の力でできそうな部分はないか
・声掛けすればできそうな部分はないか

上記を観察して見極め、安全に生活リハビリテーションを実施しましょう。

続いて、生活リハビリテーションのポイントを解説します。

生活リハビリテーションの2つのポイント

生活リハビリテーションに取り組むうえで押さえておきたいポイントは以下の2つです。

・必要以上に介助しない
・多職種と連携する

それぞれ解説します。

必要以上に介助しない

生活リハビリテーションは出来る限りご利用者様の力で取り組むことが大切です。そのため、見守っている介護士が過度に介助してしまうと、生活リハビリテーションの効果が出ない可能性があるでしょう。

適切に介助するには、ADL(日常生活動作)を正しく把握する必要があります。ADLの評価方法はいくつかありますが、なかでも「しているADL」の把握に役立つのは「FIM」です。FIMは日本語で「機能的自立度評価法」といい、ADLの評価方法のなかでも信頼性と妥当性が高いと言われています。

例えば、痛みによって腕が動かしづらいご利用者様に無理に着替えを行っていただこうとすれば、痛みが悪化してしまう可能性もあります。このようなケースは適切な生活リハビリテーションとは言えません。

生活リハビリテーションの効果を最大限発揮させるためにもADLは正しく把握し、適切な介助量でご利用者様をサポートしましょう。

多職種と連携する

生活リハビリテーションの内容は、医師や理学療法士などの専門職と相談して決めましょう。それぞれの視点で捉えることで、より効果的で安全な生活リハビリテーションが提案できます。

また、ご利用者様本人の希望や意思の確認も大切です。本人がしたいことや困っていることを解決できるように働きかけましょう。

続いて、歩行能力の維持に役立つ足を使ったレクリエーションをご紹介します。

足を使うレクリエーションも取り入れよう

介護施設ではレクリエーションを実施しますが、中には遊びながら下肢筋力をはじめとした全身の機能向上が期待できる内容もあります。

今回は下肢を使って参加する「風船シュート」をご紹介します。

事前準備

レクリエーションで使用する以下の物品を用意します。

・大きめの風船1個
・洗濯ばさみ1個
・新聞紙1枚
・ホワイトボード

風船をふくらませて口の部分を洗濯バサミで挟みます。洗濯バサミの重さで風船が高く上がりにくくなり、蹴りやすくなるでしょう。

遊び方

1.参加者を2チームに分け、先行・後攻チームを決めます。床にゴールにする新聞紙を敷きましょう。先行チームの参加者は、ゴールを囲んで輪になって椅子に座ります。

2.先行チームの中で最初に蹴る参加者を決めます。スタッフが蹴る人の足元に風船を置きましょう。

3.スタッフのかけ声に合わせ、参加者の1人が風船を蹴ります。風船が新聞紙の上に乗ったら1点獲得です。時計回りに1人ずつ蹴っていき、チーム全員が蹴り終わったらチームの得点の合計数をホワイトボードに記入します。

4.後攻チームに交代し、同じようにプレーします。全員が蹴り終わったらゲーム終了となり、得点数が高いチームが勝ちです。

注意点

風船シュートを行う注意点は以下の通りです。

・椅子や車椅子から転落しないようにする
・車椅子のフットレストに足が当たらないようにする

上記に注意して、楽しく安全にレクリエーションを実施しましょう。

まとめ

高齢者の歩行能力は、筋力の低下などが原因で衰えてしまいます。しかし、生活リハビリテーションを行えば歩行能力のみならず、ADLの維持・向上も目指せるでしょう。

生活リハビリテーションや楽しみながら取り組めるレクリエーションを業務に取り入れ、ご利用者様の歩行能力を守るのに役立ててみてください。

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